研究課題/領域番号 |
16H07099
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
粟生木 美穂 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 助手 (10783227)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 放射性薬剤 / α線 / 前立腺がん |
研究実績の概要 |
本研究では種々のがんに発現しているGRP受容体のリガンドであるBombesinの誘導体(以下、BBN)を放射性ハロゲンで標識することにより、前立腺がんの診断と治療を目的とした薬剤の開発を目指している。 標識の前駆体となるBBNはFmoc固相合成法により合成し、LC-MSより同定後、HPLCで精製を行うことにより得た。さらに、非放射性のヨウ化安息香酸のNHSエステル(以下、SIB)と上述の前駆体を混合することにより非放射性ヨウ素標識BBNが得られることをLC-MSにより確認した。続いて、I-125標識SIBを標識合成し、非放射性ヨウ素の場合と同様に前駆体と反応させ、目的とする放射性ヨウ素標識BBNを得た。以上より、放射性ヨウ素標識BBNを得る手法を確立した。 治療に利用するα線放出核種At-211の製造は福島県立医科大学設置のMP-30サイクロトロンを用いて、Bi-209 (α,2n) At-211反応により行った。乾式法により精製したAt-211の放射性核種純度をゲルマニウム半導体検出器によって確認したところ、At-211とその娘核種であるPo-211のみが認められた。核反応の副生成物となりうるAt-210の娘核種であるPo-210は強い毒性を持つため、At-211を医療応用する際にはAt-210が検出されないことが望ましい。今回の製造結果はAt-211を医療応用する上で最良の結果であったと言える。 SIBのアスタチンアナログであるSABの標識合成はI-125の時と同様に行い、HPLCで分析したところ、SIBと近似の保持時間に放射能ピークが検出された。アスタチンには安定同位体がないため、機器分析によるアスタチン化合物の同定は困難であるが、この放射能ピークがSABであると推定している。I-SIBの場合と同様に前駆体と反応させることでアスタチン標識BBNを得ることができると見込んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
標識の前駆体となるBBNの合成は終了し、その後の非放射性ヨウ素標識BBN、I-125標識BBNが得られることは確認しているが、I-125標識BBNのGRP受容体への親和性の評価や溶液中の安定性試験、マウスの体内放射能分布実験等はまだ行えていない。この理由としては、当初は2016年度後半に放射性ヨウ素の購入を予定していたが、販売元の供給不良により購入が不可能であったことが大きな原因のひとつとして挙げられる。また、赴任直後ということもあり実験環境を整えるのにも時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
標識および精製の方法は既に確立したため、今後はI-125標識BBNのGRP受容体への親和性の評価や溶液中の安定性試験、マウスの体内放射能分布実験を行う。At-211標識BBNに関しても同様の評価を行う。 上記評価の後、体内動態に改善すべき点があれば、標識の前駆体の作製に再び戻る。前駆体のアミノ酸配列を変更、修飾などにより、最適な化合物を探索する。 アスタチンの製造に関してもまだまだ立ち上げの段階であり、製造法、精製法に関して収量を上げるために改善箇所がある。使用する器材や試薬を変更して最適条件を検討する。
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