本研究では、放射性ハロゲン(診断用:放射性ヨウ素、治療用:アスタチン-211)を用いて前立腺がんの診断と治療を目的とした薬剤の開発することを目的とした。 がんへの輸送担体としては、種々のがんに発現しているGRP受容体のリガンドであるBombesinの誘導体を選択した。BombesinのGRP受容体認識部位であるC末端側の8つのアミノ酸残基を含むアミノ酸配列を含むペプチド(BBN(7-14)-spacer-NH2)をFmoc固相合成法により7種類作成した。さらに、ヨウ化安息香酸のNHSエステル(SIB)と上述のペプチドを反応させることにより非放射性ヨウ素標識BBN(BBN(7-14)-spacer-NH-IB)を得た。PC-3前立腺がん細胞を用いて作製したBBN誘導体のGRP受容体への親和性の評価を行い、いずれのBBN誘導体もGRP受容体に親和性を有することを確認した。SIBのアスタチンアナログであるSABの標識合成を行い標識可能であることを確認している。 作製したBBN(7-14)-spacer-NH2のうち一種類をI-125標識SIBと反応させ、精製して得た放射標識体をPC-3前立腺がん担がんマウスに投与し、1時間後の体内放射能分布を評価したところ、排泄臓器である小腸や肝臓に大部分が分布し、腫瘍への集積はわずかであった。I-125標識BBNの腫瘍への集積がGRP受容体を介していることを確認するために、bombesinを過剰量同時投与することによる阻害実験を行ったところ、I-125標識BBNの腫瘍への集積はbombesinの同時投与により有意に低下し、I-125標識BBNの腫瘍への集積にGRP受容体が関与していることが示唆された。投与したペプチドのクリアランスが高すぎることが腫瘍への集積が小さい原因であると考えられ、現在、腫瘍への集積の向上させる新たなペプチドを検討中である。
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