研究課題
本研究の目的は、動脈管閉鎖に必要な内膜肥厚形成に対する、組織型プラスミノーゲン活性化因子(PLAT)の関与を解明することである。始めに、胎生21日目(満期)の胎仔ラットを用いて、動脈管と大動脈の内皮細胞を分離したところ、PLATが大動脈よりも動脈管の内皮細胞に高発現している事を見出した。発達段階の動脈管の免疫組織染色で、PLATは内弾性板の断裂前から内皮細胞に発現しており、発達と共に増加していた。PLATは、プラスミノーゲンをプラスミンへの変換し、プラスミンはマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)を活性化させる。in situ ザイモグラフィーを行ったところ、ラット動脈管の内弾性板で高いMMP活性を認めた。また、動脈管の内皮細胞は、大動脈より高いMMP-2活性を持ち、プラスミノーゲン存在下でMMP-2活性が増加した。研究代表者は、内皮由来のMMP活性が内弾性板を断裂させる事をin vitroで示すために、3次元血管モデルを作製した。この血管モデルでは、プラスミノーゲンの存在下でのみMMP活性化が起こり、内弾性板が断裂した。そして、PLATのsilencingにより、これらの現象は抑制された。in vivoで、胎生19日目の未熟な胎仔ラットへプラスミノーゲンを投与すると、動脈管の内弾性板のMMPが活性化し、内弾性板断裂と内膜肥厚形成が促進した。ヒト動脈管の内膜肥厚部でもPLATが高発現しており、内弾性板でMMPが活性化していた。本研究から、動脈管の内皮細胞で高発現しているPLATは、MMP活性化を介して、内弾性板を断裂させ、動脈管の発達を促進させていることが示された。新生児では血中プラスミノーゲン濃度が生理的に低いため、本結果は動脈管開存症に対するプラスミノーゲン補充という新規治療法の可能性を示唆した。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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PLOS ONE
巻: 13 ページ: e0190871
10.1371/journal.pone.0190871
The Journal of Physiological Sciences
巻: 67 ページ: 723~729
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