研究実績の概要 |
本研究は,口腔癌の放射線照射後の再発制御を目標として行った。われわれは以前に脳腫瘍において,放射線照射によりCD11b陽性骨髄由来細胞(CD11b+骨髄細胞)が腫瘍内へ流入し再発に寄与することを報告した(Kioi et al, 2010).またさまざまながん種において,腫瘍内に骨髄系細胞群であるマクロファージやMyeloid-derived suppressor cell(MDSC)が浸潤し血管新生や腫瘍免疫抑制を介して腫瘍の悪性化に寄与していることが報告され,がん微小環境を構成するこれらの非腫瘍細胞は新たな治療の標的として注目されている (Jain et al, 2008).一方で,近年免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-1/PD-L1抗体薬が注目され,再発転移または遠隔転移を有する頭頸部癌におけるPD-1抗体薬ニボルマブの使用が国内承認された.PD-1,PD-L1はそれぞれ主にT細胞,腫瘍細胞上で発現し,抗腫瘍免疫抑制を解除し効果的な免疫応答を誘導するものであるが,一部の報告で単球やマクロファージ,MDSCなどの骨髄由来細胞上での発現が示されている (Norman et al, 2014).そこで本研究では,放射線照射後の口腔癌における微小環境変化と骨髄由来細胞の関与を検証し,それらの細胞群におけるPD-1/PD-L1の発現を検討した。そして放射線照射後の微小環境変化をターゲットとする抗PD-1/PD-L1抗体薬を用いた新たな治療法の確立を最終目標とした. H28年度は,口腔扁平上皮癌マウスモデルと口腔扁平上皮癌患者の臨床検体を用いて,放射線照射後の口腔癌における微小環境変化を検証した。放射線照射による血管損傷と低酸素により,マクロファージやMDSCの腫瘍内への誘導が生じることを免疫染色で示した。
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