[Ⅰ]小分子化合物により誘導した褐色脂肪細胞様細胞の分化多能性および生体内動態の評価 前年度に決定した小分子化合物を用いた培養条件をもとに、ヒト正常皮膚由来線維芽細胞を培養し、real time RT-PCR法を用いて、分化多能性マーカーNANOGのmRNAを経時的に測定してiPS細胞との比較を行った。その結果、経時的なmRNA発現の上昇は認められず、分化多能性を経由しないことを示した。また、同様の培地を用いて種々の期間培養したヒト線維芽細胞、およびHeLa細胞を免疫不全マウスに移植し、作出した細胞の造腫瘍性についての評価を行った。その結果、移植した細胞の増大は認められず、本方法によって作出した細胞は造腫瘍性を持たないことが強く示唆された。さらに、ヒト正常皮膚由来線維芽細胞にウイルスベクターを用いてGFP遺伝子を導入し、上記[Ⅰ]と同様の培地を用いて一定期間培養した後、免疫不全マウスに移植した。続いて、移植後1か月目に移植部位を摘出して蛍光観察を行って生体内生着性の評価を行った。その結果、細胞塊およびGFP蛍光を確認し、本方法によって作出した細胞の生体内生着性を示した。 [Ⅱ]線維芽細胞以外の細胞に対する誘導能の評価 ヒト正常表皮角化細胞、臍帯静脈内皮細胞、および末梢血単核球を、上記[Ⅰ]あるいは血球培養用培地に上記[Ⅰ]と同様の各成分を添加した培地を用いて培養し、real time RT-PCR法を用いてUCP-1のmRNAを測定し、線維芽細胞以外の細胞からの褐色脂肪細胞への転換についての評価を行った。その結果、本法によるダイレクト・リプログラミングは細胞によって効率等が異なる可能性が示唆された。 以上の結果より、本法および本法により作出した褐色脂肪細胞の再生医療への応用にとって重要な多くの知見が得られた。
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