研究課題/領域番号 |
16H07131
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
勇井 克也 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (50783875)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 血管内皮細胞 / 収縮 / 弛緩 / アルコール / 炎症 |
研究実績の概要 |
正常Wistar系雄性ラットの上腸間膜動脈を用い、血管機能に及ぼすエタノールの作用を等尺性張力の測定により収縮反応の変化について検討した。 これまでに、IL-1βを暴露した血管に対するエタノールの作用を示してきた。フェニレフリンによる収縮が一定しているところにIL-1β暴露すると、1hで収縮は増大し、3h後には収縮は暴露前より減退し、弛緩反応へ転じた。3h後の弛緩反応は、各種阻害剤を用いてiNOS発現による弛緩反応であることを明らかにした。また、事前にエタノール処理をするとiNOS発現を抑え、弛緩反応を抑制することも示した。一方、IL-1β暴露1h後に見られたフェニレフリン収縮の増大は、トロンボキサンA2(TXA2)阻害剤であるインドメタシンの共存により消失した。このことより収縮の増大は、TXA2を介した反応と示唆された。さらに、TXA2を産生させるシクロオキシゲナーゼ(COX-1、COX-2)の阻害剤であるSC-560、NS-398、および内皮細胞のはく離処理により収縮の増大が抑えられた。この収縮の増大とIL-1β暴露血管の弛緩反応の結果と合わせると、エタノール処理により、内皮細胞のCOXから産生されるTXA2を介した収縮反応をさらに増大させる傾向にあった。つまり、エタノールがIL-1β暴露3h後の弛緩反応に対し、前段階でTXA2を介した収縮を増大させることにより血管機能の恒常性の維持、もしくは生体防御的な反応を引き起こす可能性があると推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血管における収縮・弛緩反応へのアルコールが及ぼす影響について様々な観点から解明しつつある点において、おおむね順調に進展していると考えられる。正常ラットより摘出した上腸間膜動脈にサイトカイン(IL-1β)を負荷した後、ホモジナイズし、遠心分離後の上清サンプルを用い、リアルタイムPCR・Westernblotにより、COX-2のタンパク質の発現を確認できている。当初の予想通り、IL-1β誘導のCOX-2のタンパク質の発現を確認し、IL-1βとインドメタシンを同時に暴露させると、COX-2のタンパク質の発現が抑えられた。今後はIL-1βが暴露された血管にエタノール処理を行うと、どのように影響するのか考察していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
Wistar系雄性ラット(10週齢)に10%エタノールを含んだ液体飼料(Lieber食)を10週間投与し、慢性アルコール摂取ラット作製し、上腸間膜動脈を摘出し、輪状標本を作成し等尺性張力を測定する。慢性エタノール群とコントロール群の各群の収縮反応下にIL-1βを追加し、両群比較によりTXA2を介した収縮反応へ及ぼす慢性エタノール摂取の影響について検討する。また、TXA2を介した収縮反応への慢性エタノール摂取の影響が急性投与と違いがあるか比較検討する。これらにより、血管の収縮・弛緩の維持・恒常に重要なNOとTXA2との「クロストーク」を解明する手がかりとなり、飲酒による循環器関連の突然死や高血圧の発症の機序などの病態の解明に役立つものと考えられる。
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