研究課題/領域番号 |
16H07139
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研究機関 | 愛媛県立医療技術大学 |
研究代表者 |
内藤 真帆 愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 講師(移行) (00784505)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | ヴァヌアツ共和国 / ツツバ語 / 少数言語 / 無文字言語 / 数詞 / 数え方 / 葉を媒介とする数の記録方法 / オセアニア祖語 |
研究実績の概要 |
ヴァヌアツ共和国の無文字言語ツツバ語には、近隣の多くの言語には報告されておらずオセアニア祖語とも異なる「基数と序数を組み合わせた数え方」や「葉を用いた数の記録方法」が存在する。本研究はこの点に着目し、ツツバ語の数え方が祖語から変化した可能性および無文字社会に文字や数字を媒介としない「記録方法」が生み出された可能性について、現地調査を通して分析・考察を行うものである。 平成28年度には、2度の現地調査を行った。最初の調査では、ヴァヌアツ共和国のツツバ島で話されるツツバ語の数詞を調べ、基数・序数・倍数・分配数を明らかにすると同時に、これをタマンボ語やマヴェア語、アラキ語などの近隣言語の数詞と比較して考察を行った。ツツバ島では日常生活において大きな数が使用されないことから、2度目の調査では聞き取りと参与観察によって大きな数が用いられる場面を調べ、儀式時に客人を数えるために大きな数を使用すること、数える際には葉を切り取り、葉を記録媒体として用いること、さらに切り取った後の葉を保存することを明らかにした。 ツツバ語の調査だけでなく、ツツバ語の数体系を同系統の言語と比較・考察するために近隣言語の現地調査も試みたほか、ヴァヌアツ共和国の国語であり公用語であるビスラマ語がツツバ語の数詞に及ぼす影響に関しても考察を行った。これらの調査研究で得られた音声データはすべて文字化し、記録・分析した。また本調査を行う中で得られたデータの一部を論文としてまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヴァヌアツ共和国の北・中央ヴァヌアツグループに下位分類されるマヴェア語、アラキ語、タマンボ語などを対象に、数体系に関する資料を収集し、ツツバ語と比較した。その後ヴァヌアツ共和国で現地調査を行い、ツツバ語の基数・序数・倍数・分配数を明らかにした。また大きな数がどのような場面で使用されるかを聞き取り調査と参与観察により考察した。 3月には再度ヴァヌアツ共和国で現地調査を行い、伝統的儀式において客人を数える際に大きな数が用いられること、数える時には葉のふちを切り取ること、葉が記録媒体となっていること、その保存の方法などを明らかにした。 以上、おおむね順調に調査研究が進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ツツバ語の数え方はオセアニア祖語と異なることから、引き続きツツバ語の調査を行い、大きな数が用いられる場面の分析を行う。また近隣言語とツツバ語の数詞・社会・文化を比較し、過去にツツバ語に言語変化が生じた可能性とその背景について考察を行う。
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