本研究の目的は高効率航空交通システム実現のため国内主要空港を発着する定期便の飛行軌跡を軌道最適化の観点から分析し消費燃料および飛行時間を評価することで運航効率向上の可能性を示すこと,および国内のすべての空域について混雑や他機との干渉・空域制限等により効率が低下している部分を特定することで現行運用方式の改善につながる新たな管理方式を提案することである. 平成29年度は,混雑空港への継続降下運用への適用可能性,および気象と飛行制限空域を考慮した飛行経路の最適化について,国内定期便の航跡データ(CARATS Open Data 2014)および研究代表者らが実測したADS-Bシステムによる航跡データを用いて検討を行った.具体的には,混雑空港である関西国際空港への到着便が他の交通流との干渉を避けるため水平飛行している部分を複数箇所特定し,継続降下飛行により削減可能な燃料消費量を推定した.提案した継続降下の飛行軌道は平面経路を実際の運用と同一に固定し高度および速度を最適化したものであり,他の交通流と平面経路が交差する部分でも高度方向に十分な安全間隔が確保できることが判明したため,実運用に適用できる可能性が示唆された.また,航空路にとらわれず横の自由度を与えて経路の最適化を行うと風の効果により飛行時間を短縮することができるが,本研究では新たに飛行制限空域を拘束条件に含めた経路最適化の計算ツールを開発した.複数の機種および路線からなる飛行をこのツールにより最適化した結果,制限空域を考慮した場合は考慮しない場合に比べ飛行時間の短縮量は多少劣化するものの,大型機で長距離を飛行する路線では一定の効果を維持できることが明らかとなった.
|