研究課題/領域番号 |
16H07146
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研究機関 | 北海道文教大学 |
研究代表者 |
三ツ木 真実 北海道文教大学, 外国語学部, 講師 (80782458)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 認知言語学 / 多義語 / 前置詞 / 学びの認識 |
研究実績の概要 |
本研究では、英語の語彙(特に多義語としての前置詞)学習に焦点を当て、英語学習者を対象として認知言語学の知見を活用した語彙学習活動や明示的な指導を実践する。また、その有効性や学習・指導に対する学習者の認識を調査することで、認知言語学を応用した語彙指導及び学習の意義と課題を示すことを目的とする。本研究で学習や指導に応用する認知言語学的知見には、語が持つ中核的意味概念であるコア・ミーニングを採用した。研究初年度である平成28年度は、英語教育の分野においてコア・ミーニングを語彙の指導に用いた先行研究の調査・整理を行った。また、予備調査として量的・質的データの整理と分析を行った。量的データ分析の結果、コア・ミーニングに基づいた前置詞指導の有効性が示された。また、前置詞の持つ空間的用法に対する指導の有効性や前置詞の既有知識の多い学習者に対して指導が有効に働く結果も示唆された。一方、質的データ分析には、コア・ミーニングに基づく学習に対する認識を問うアンケートの回答を用いた。分析の結果、コア・ミーニングを用いた学習に対して学習者自身が認識する課題として「コア・ミーニングの応用に向けた継続的トレーニングの必要性」「コア・ミーニング応用の困難さ」「コア・ミーニングの概念が持つ曖昧さの解消」等が浮上した。なお、コア・ミーニングの有効性を検証する際の比較対象として、英和辞書がこれまで多く取り上げられてきたことから、この両者の比較も含めて学習者の認識を調査した。この点を踏まえ、平成28年度は多義語指導・学習におけるコア・ミーニングと英和辞書の有効性の比較に焦点を当てた論文の執筆を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度は、予備調査としてこれまでに収集したデータの整理と分析を行なってコア・ミーニングの教育効果の検証及びコア・ミーニングによる学習や指導に対して学習者が持つ認識を調査した。計画では、本調査の量的調査で使用する測定ツールの信頼性・妥当性検証も実施しつつ測定の質を高める作業を行う予定であったが、予備調査で収集した質的データの整理と分析に多くの時間を要したためにまだ行われていない。しかし、質的データ分析の結果からは、複数の視点から語彙学習・指導のツールとしてのコア・ミーニングに対する学習者の認識を可視化することが可能となった。予想に反して、質的データ分析の結果から多くの興味深い示唆が得られていることから、研究の性質が当初予定していたものから若干変化し、質的な分析に比重を置く方向性になることが予想される。ただ、当初から、先行研究ではアプローチが多くはなされていなかった学習者の認知面について、質的分析を通じて深く掘り下げていく研究を想定していたことから、今後、応用に対する新しい提案や及び新たな研究課題を浮上させることに取り組む。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、引き続きコア・ミーニングによる指導・学習に対する学習者の認識について明らかにするために、さらなる質的データの分析と考察を進めていく。また、学習者がどのような認知処理を行ってコア・ミーニングを学習に応用しているかについても焦点を当てて調査を進めたい。こちらについても予備調査で収集した質的データの分析と考察を進め、その結果を年度の中盤に開催される研究発表会や国内学会及び国際学会等で報告する予定である。また、論文の執筆も行い、関連学術誌への投稿を目指す。加えて、年度後半には、これまでの研究を見直し、新たな研究課題をまとめ、今後の研究計画とその実施に向けて検討する。
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