研究課題/領域番号 |
16H07147
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研究機関 | 盛岡大学 |
研究代表者 |
高橋 春菜 盛岡大学, 文学部, 助教 (80781418)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | ボローニャ / コーディネート / 学校教育 / 学校外主体 / 地域教育 / 多様性 / 教育の町 / イタリア |
研究実績の概要 |
1.学校調査(2件のサンプル校につき①学校教育計画の精査②学校長への聞き取り③協力外部主体への質問紙調査)、2.地域教育コーディネートに関する地域行政調査(市教育局の担当者及びN地区教育専門員への聞き取り)、3.地域教育史に関する文献調査、4.他地域比較の予備調査、以上の調査を実施した。その結果、およそ以下のことが明らかになった。 2と3に関して、ボローニャでは1960年代に市政が牽引する形で町全体を議論に巻き込んでの豊かな学校構想が進められ、1990年代以降には町を教育の場にする構想が具体化され、2008年以降はEUの教育政策動向に連想しながらも教育の町としての質の維持に取り組んでいる地域行政の枠組みの変容及び内実の一部が明らかになった。 1に関して、サンプルとした二校ともに、協同組合やアソシエーション、ボランティア組織、フリーランスの人材、大学、財団、州政府、地域教育拠点、文化施設等を幅広く活用している実態が浮かび上がった。ただしA校では、外部主体の協力を得た教育活動は対象者と実施時間からみて限定的であり、学校の教育活動全体のなかで周縁化されている。また当該活動へのニーズの捉え方は個人化している。すなわち多くの場合に外部主体の活用は学校の教育活動全体の質保証ではなく各家庭の判断による付加価値的なものと位置づけられる。そうしたなかでは幅広い対象に継続的に関与する地域教育拠点や教育専門員の重要性が浮き彫りとなる。他方B校は、正課の学校教育活動の多くを外部主体の継続的な活用にもとづき展開している。学校教育全体の質向上に外部主体を積極的に活用している点で、A校とは外部主体に与える位置づけが本質的に異なる。B校は伝統校として独自の教育形態をもつことから、地域連携でも上述した1960年代の形態を一定の程度維持している可能性が高い。より具体的に背景と実態の比較を進めたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた調査項目のうち1.学校教育に直接に関与する外部主体、2.学校教育に間接に関与する外部主体、以上について予定していたほどのデータを量的に確保するのが困難であった。じっさいには現地での直接交渉が欠かせず、また実態が極めて多様であることから数的データの収集を意図した質問紙調査よりも対面で聞取りをおこなうほうが現段階では有益な情報が得られることが浮彫となった。そのためデータの量的な確保においては予定を下回る状況となっているが、代わりにサンプル校の厳選をおこない、各校の特色を踏まえた調査の見通しをつけることで効率性を補った。また厳選されたサンプル校に対して訪問による直接交渉をおこない着実にクライアントにアクセスできる状況を整えた。これらのサンプル校での実地調査は既に開始しており次年度にも継続して展開する予定である。 一方、原則として次年度に進める予定であった3.自治体コーディネートの調査につき、すでに戦後史に関する文献収集及び行政担当者への聞き取りを先取りして進めることができた。以上から、全体としてはおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
1.学校外主体の調査(ボローニャ):前年度の調査で明らかとなった外部人材について、当人らへの聞き取り調査ないし質問紙調査により、以下の項目を明らかにする。(1)属性(学歴、関連する職歴、所属、養成・研修の経験、兼業の有無、その他の関連する経験について、今後の身上の見通しについて)、(2)教育事業に携わることとなった経緯、(3)意図(活動で重視すること、理想、課題、今後の展望)。これらの質的データをもとに複数の人材に共通する傾向と差異を分析し、可能であれば類型化する。さらに対象校を増やして事例収集に努めると同時に、学校ごとの特色の分析と要因の検討を進める。 2.自治体等による地域コーディネートについての調査(ボローニャ):外部人材と学校教育の連携について、地域教育のコーディネート機能がいかなるものかを明らかにする。自治体等の公的主体による文書の分析に加え、主な担い手への聞き取りないし質問紙調査を行う。また、各人材の自治体以外の所属組織や各教育拠点によるミドルマネージメントやネットワーク機能を明らかにする。具体的には公的文書の分析及び関連資料の分析や、必要に応じて地域行政担当者への聞き取りを行う。 上記を主として進めながら、3.外部主体の所属組織と制度利用の関連の検討(ボローニャ)、4.他地域の学校についての概要調査(トレントほか)にも取り組む。
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