研究課題
顎顔面の形態形成には様々な遺伝子の協調的な発現制御が重要であり、その制御機構が破綻すると様々な異常が引き起こされる。GATA3は発生期から出生後にかけて様々な組織に発現している転写因子で、標的臓器の発生や恒常性維持に重要な機能を担っている。先行研究ではGATA3ノックアウトマウスは顎顔面領域の著しい形成不全をきたすことが知られており、GATA3は顎顔面形成に関わっていると考えられている。しかしながら、GATA3ノックアウトマウスは胎生中期までに死亡するため、顎顔面形成におけるGATA3の機能を詳細に検討することはできなかった。そこで申請者は、まず、マウス顎顔面発生過程でGATA3がどのような領域に発現しているかを評価するため、片方のアリルのGata3遺伝子座にLacZレポーターを組み込んだマウス(Gata3(Z/+)マウス)の胎児を用いてβ-Gal染色を行った。その結果、口蓋の発生が起こる時期(胎生11.5日-13.5日)の上顎突起においてLacZ遺伝子の発現が見られたことから、GATA3がこの時期の上顎突起に特異的に発現していることが明らかとなった。次に申請者は、変異アリルからのGATA3発現量が、正常アリルの8%程度に減弱しているマウス(Gata3ノックダウンマウス)の表現型を解析することで、GATA3ノックアウトマウスに見られる胎生致死性を回避しつつ顎顔面発生過程におけるGATA3の機能を解析しようと試みた。その結果、GATA3ノックダウンマウスは腎臓の形成不全を示すととに、出生後早期に死亡することが明らかとなった。また、生後0日のGATA3ノックダウンマウスは著しい空気嚥下を呈しており、嚥下機能に異常をきたしている可能性が考えられた。また申請者の研究グループでは、GATA3ノックダウンマウスに見られる腎臓形成不全に関する知見をまとめ国際誌に発表した。
2: おおむね順調に進展している
当初の想定よりもGATA3ノックダウンマウスにおける腎臓の形成不全が重篤であり、出生後まもなく死亡し食殺されるマウスが多かったため、解析に十分なGATA3ノックダウンマウスを得ることができなかった。しかしながら、今後は胎生後期のマウス胚や条件付きノックアウトマウスを合わせて解析することで、顎口腔における表現型解析を進めることができると考えている。
出生したGATA3ノックダウンマウスは著しい腎臓の形成不全を示すとともに、嚥下障害に起因すると考えられる空気嚥下を呈し死亡する。そこで、胎生17.5-18.5日齢のマウス胎児を用いて硬口蓋および軟口蓋形態の組織学的評価を進めるとともに、組織を実体顕微鏡下で切除・単離し、RNAシークエンス(RNA-Seq)法を用いて口蓋形成異常に関わる遺伝子のスクリーニングを行う。また、GATA3条件付きノックアウトマウスを用いて、腎機能障害による影響を排除しつつ顎口腔の表現型を解析する。
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Molecular and Cellular Biology
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