本研究は結婚後に妻方居住し、妻が実家とのネットワークを強く持ち、土地を相続する伝統がある東北タイの農村で、女性の収入獲得が世帯内の意思決定に影響するか検証することを目的とした。調査対象者が20歳代から30歳代であった20年前と比べて、離婚や未婚へのネガティブな評価や伝統的なジェンダー規範が薄れ、女性の移民労働や移動機会が増えた。女性は移民労働により現金収入を獲得し世帯に貢献する世帯員となり、収入の用途を決定していた。その収入で畑仕事は人を雇用して従来の役割を代替させ、育児の役割を村の母親に担ってもらい、母親は娘からの送金で村の生活を維持し、移民労働を終える頃に娘が村の生活基盤を受け継ぐ。
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