本研究では、知的自律性の本性と価値について認識論と教育哲学の観点から検討した。まず、社会から切り離された個人をベースに考える過去の知的自律性概念について、現代認識論を精査・整理しながら批判した。次に、知的自律性を個人相互の問答における応答責任の観点から捉え、行為者性を組み込む新たな責任主義的アプローチの可能性を提示した。次に、認識的他者関係の中での認知的自己の発達について、教育哲学的観点から検討した。具体的には、他者の批判や疑問に対する認識的傷つきやすさを明確にする一方、問答の一参加者として認められていくことで認知面での自律的自己形成が促されることを示唆した。
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