研究課題/領域番号 |
16H07160
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
鳥塚 あゆち 青山学院大学, 国際政治経済学部, 助教 (70779818)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | アンデス / 先住民共同体 / 土地画定 / 文化人類学 / 牧畜文化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、アンデス牧民社会における土地利用の変化と、国家における「先住民共同体」の今日的意味を明らかにすることにあり、おもな研究方法は調査対象の共同体におけるフィールドワークと関連資料の収集である。本年度は、共同体での調査前の準備期間と位置づけ、関連資料の収集にあたった。 リマ市では、2ヶ所の国立文書館において調査地と周辺地域に関する文書記録を探した。直接共同体について書かれた資料を見つけることはできなかったが、以前に属していた別の共同体に関する資料を収集することができた。また、大統領府内にある領土画定局を訪れ、2016年に公布された先住民共同体の領域に関する法令文書を入手した。担当者に土地の境界に関するインタビューも行い、共同体レベルの領土画定は中央省庁では把握していないことを確認した。 クスコ市でも、歴史文書館で共同体が属するチュンビビルカス郡の資料を収集した。先住民共同体に関する公文書は農業省が管轄しているとのことであったので、農業省に文書の検索・閲覧を依頼したが、許可に時間がかかったため現地の調査協力者に文書入手を依頼した。公的記録監督局のシクアニ支局では、調査地が属村から共同体として承認された際の記録や領土の画定記録等の文書を入手し、以前に共同体成員から聞き取ったことと併せて共同体成立の経緯がより明確になった。 これらの資料のほか、農地改革時の法令や先住民共同体に関する法令といった公布済みの法令に関する文書も入手することができ、国家における先住民共同体の制度と内実を考察するために必要な資料は概ね収集することができたと言える。また資料収集のほか、クスコ市に居住する共同体成員から共同体内の土地区分等に関する聞き取りを行い、共同体の現状について都市に移住した若者の考えを窺い知ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
関連資料の収集を比較的スムーズに行うことができ、当初予想していたよりも多くの文書資料が得られたため、成果は大きかったと自己評価できる。農業省が所蔵している文書に関しては、閲覧手続きに思ったよりも時間がかかり、渡航期間中に許可が下りなかったため、現地の調査協力者に入手を依頼した。しかし、文書が存在することは確認できており、次年度の調査前に入手できる見込みであり、今後の研究の進展を妨げるものではない。どのような資料をどこが所蔵しているのかを特定するのが困難であり、無駄足に終わることもあったが、比較的短期間で共同体成立に関わる文字資料を入手できたことは、本年度の大きな成果であった。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、牧民共同体におけるフィールドワークを中心に研究を進める。ペルーへの渡航は8月から9月にかけての約4週間を予定しており、具体的には共同体内の牧草地区画範囲の実測、土地・生業・共同体に関して、特に若者世代を対象に聞き取りを行う予定である。現地調査の前後でクスコ市に滞在している期間中に、前年度で入手できなかった農業省が持つ文書資料を収集する。帰国後は、個人が使用している牧草地範囲の実測データを地図上にプロットしデータ化する。 また、これまでの研究で得られた知見と併せて、本研究の中間報告として学会等で成果の発表も行う。
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