研究課題/領域番号 |
16H07164
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
三輪 洋文 学習院大学, 法学部, 准教授 (20780258)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | イデオロギー / 信念体系 / 右翼的権威主義 / 社会的支配傾向 / 政治的社会化 / 若年層 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,独自に実施する若年層を対象とした世論調査のデータを用いて,信念体系としてのイデオロギーの形成過程を明らかにすることである。当初の計画では,本年度は2つのオンラインサーベイを行う予定であったが,予算の問題により1つのみ実施した。 実施した調査は,政治的社会化の役割を明らかにするために,調査会社のオンラインパネルに登録している15~22歳を対象として,広範囲にわたる争点態度に加えて,親の党派性などの社会化環境,認知能力,政治関心などを尋ねるものである。受験勉強による協力率の低下を避けるために3月中旬に実施し,性別×年齢(1歳区切り)の16のカテゴリについて約100人ずつから回答を得た。年齢による割り当てを施したのは,年齢ごとの部分標本内で共有されている信念体系の構造を部分標本間で比べることによって,信念の体系化がどのようなペースで進行するかを調べるためである。 実施を取りやめた調査では,右翼的権威主義(RWA)や社会的支配傾向(SDO)と争点態度から測定される政治的イデオロギーの関係を明らかにする予定であった。独自の調査を実施する代わりに,既存の世論調査データを二次分析することで部分的に目的を達成することを試みた。既存の世論調査にはRWA・SDOを測定するための専用の質問が設けられていないため,十分な分析とは言えないものの,防衛・安全保障をめぐる対立を主な内容とする保守-リベラルのイデオロギー的傾向が,RWA・SDOと相関をもっていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の想定よりも調査費用が高くなったためにサーベイを1つしか実施できなかった。また,若年層を対象とした世論調査を実施するにあたって,受験勉強による協力率の低下を避けるために,実施を3月中旬まで遅らせた。本年度は,得られた世論調査データを分析し,その結果を基にした論文執筆に着手するところまで計画していたが,上に挙げた事情により,そこまでは至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
第一に,昨年度に行った若年層を対象とした調査データならびに一般の有権者を対象とした既存の世論調査データを用いて,22歳以下と30歳前後の信念体系の比較を行う。くわえて,22歳以下の標本内でも年齢別の部分標本間で信念体系の比較を行う。これによって,青年期に信念の体系化がどのようなベースで進行するのかを調べる。 第二に,昨年度のサーベイの対象者に対して,約半年後に同じ争点に対する態度を測定する調査を実施する。これによって,信念の体系化の時系列的な変化を観測する。さらに,本年度に実施予定であったRWA・SDOや世界観などを測定する項目も盛り込み,政治的社会化の過程におけるRWA・SDOの影響についても分析を行う。 この調査は9月に実施する予定である。10月以降に分析を進め,本年度の調査データの分析と合わせて,年度内には海外の学術誌に投稿できる水準の原稿を完成させたい。
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