前年度に実施した若年層対象のオンラインサーベイのデータを利用して,争点態度が青年期にどのようなペースで形成され,イデオロギー的に体系化されるかを明らかにする分析を行い,暫定的な結果を日本政治学会研究大会で報告した。また,前年度に2回目のオンラインサーベイを実施する代わりとして進めていた二次分析に関して,その結果を日本選挙学会研究会で報告した。 さらに,新規に2つのオンラインサーベイを実施した。それぞれ若年層と全年齢を対象とし,ほぼ同じ内容を同じ時期(2017年衆院選後の11月)に尋ねることで,他の年齢層と比較したときの若年層の特徴を明らかにすることを目的としている。右翼的権威主義(RWA)と社会的支配傾向(SDO)を測定する質問項目群も採用した。本来であれば,若年層調査は前年度の調査に回答した人を対象とする追跡調査として,態度の安定性も測定する予定であったが,調査会社との連携に不備があり,それは叶わなかった。 得られたデータを分析した結果,争点態度のイデオロギー的一貫性は,青年期(15~23歳)の途中までである程度のレベルに到達するが,青年期よりも後にさらに一貫性が上昇する傾向がみられた。また,欧米諸国で報告されてきた,RWAが文化的保守主義と,SDOが経済的保守主義と結びつくという傾向が日本でもみられ,RWAとSDOがともに外交的保守主義とも関係することもわかった。このような傾向は,全年齢調査だけでなく,若年層調査のデータでもほぼ同様に認められた。これらの結果は,有権者のイデオロギー形成において,政治エリートの影響(トップダウン過程)と個人の性格,気質,心理的因子の影響(ボトムアップ過程)がともに重要であることを示唆している。 これらの結果は日本語で暫定的な論稿としてまとめた段階にあるが,最終的には英語論文として海外の学術雑誌に投稿したいと考えている。
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