研究課題/領域番号 |
16H07166
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
本川 勝啓 学習院大学, 経済学部, 准教授 (90780122)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 非財務情報開示 / 統合報告 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は統合報告の枠組みにおいて、経営者はどのような開示行動をとり、利害関係者がその開示情報をどのように評価しているのかについて、新規的な統計手法を用いて実証研究を行い、統合報告の影響を明らかにすることである。 平成28年度は、特に人的資本を題材に財務諸表においてどのように認識・測定・評価されるのかを現行の会計制度に照らし合わせて考察した。財務情報と非財務情報が相互に補完しあう関係にあり、その境界線が利害関係者の意思決定との関連性や信頼性に影響されることを結論として導いた。現行制度についての考察は、今後実証研究に取り組む際に先行研究の整理や理論仮説の設定において非常に重要な役割を果たす部分である。この一考察は学術論文として公表する予定である。 新規的な統計手法についても並行して知識の修得を行っている。特にテキストデータの語彙やトピック等を確率分布で表現する統計手法や、テキストを語彙の特徴によって分類する統計方法などに着目し、知識の修得に取り組んでいる。これらの手法を用いて、どのように企業をビジネスモデルごとに分類することができるかとどのように開示情報内容を分類できるかを検討している。 文脈を考慮した分析に関しては、現状の統計手法での限界も認識しており、場合によっては実験的なアプローチによって取り組むことも検討している。このため社会科学の実験的なアプローチに関する知識修得にも着手している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一歩目として行った現行の会計制度に基づいた人的資本に関する財務諸表と非財務情報開示の検討については、研究計画策定当初は想定していなかったものの、今後の実証研究を行う上で非常に重要な知見が得られた。本考察を行ったことにより、若干の予定変更はあったものの、以降実施する実証分析をより効率的に行う影響も期待できるため、特段計画が遅れているという認識はない。 当初の研究計画では、新規的な統計手法は平成29年度の研究から用いていく予定であった。しかし、統計手法の知識修得を進めていく中で、平成28年度に取り組む予定であった研究課題についても当該手法を適用可能であることが判明した。より大きな貢献のある研究を実施するという観点から、当初の計画を変更し平成28年度及び平成29年度の研究課題の両方について新規的な統計手法を適用する計画で研究を進めている。実証結果を平成28年度中に出すという当初の計画とややずれるが、研究の進展という観点からはおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
テキストデータの語彙やトピック等を確率分布で表現する統計手法や、テキストを語彙の特徴によって分類する統計方法の知識修得が一段落した段階で、データ分析を開始する予定である。研究課題に関しては当初の予定と大幅な変更はないが、文脈を考慮した分析に関しては現状着目している手法では限界があることも認識している。この研究上の問題点は技術革新によって今後解決される可能性もあるが、現時点では不確実性は高い。このため、文脈を考慮した分析に関しては実験的なアプローチに切り替えるなど柔軟性を持って対応する予定である。
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