プロイセンの作家H・v・クライストの日刊紙『ベルリン夕刊新聞』(1810/11)における「公共圏」構想の意義を、歴史的・現在的な視点から明らかにした。虚実入り混じるその報道は、理性的な熟議と世論形成をめざす啓蒙主義的な言論活動からは明らかに逸脱しているが、同時にそこではしばしば報道内容の真実性が強調され、この新聞を多様な意見のためのフォーラムとして供する編集者の身ぶりも確認できる。『ベルリン夕刊新聞』は、18世紀の「市民的公共圏」の理念に対して両義的な位置に立つが、規範の形成と攪乱というその傾向がまさしく近代の新聞の二つの側面を体現している点で、近代ジャーナリズムの範例的な事例をなしている。
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