研究課題
我々の腸管内には約1000種類以上の100兆個にも及ぶ細菌群が高密度に生息しており,これまでの研究成果により,これらの腸内細菌のバランスが宿主の恒常性維持に重要であることが明らかとされている.最近,成体腸管上皮幹細胞(オルガノイド)培養法により正常上皮細胞が培養可能になったことから,腸内細菌が宿主に及ぼす生理活性の理解が進んでいるが,現行のオルガノイドは上皮細胞の頂端側が内側に存在する管腔構造を保有する3次元構造体であるため,腸内細菌との相互作用の研究を遂行する上でボトルネックとなっている.本研究では,既存のオルガノイド培養技術を発展させ,生体内の腸管構造と同様の3次元構造を保ちつつ,かつ管腔構造を持たない新規3次元オルガノイド培養法”mini-gut on dish”の確立を目指す.【平成28年度:計画1】申請者は,トランズウェルを用いたヒトの正常大腸上皮由来オルガノイドの2次元培養のプロトコルの作製を試みた.2次元培養に最適な細胞外基質を探索するために,ゼラチンや各種コラーゲンをコートしたトランズウェルで2次元培養を行った結果,I型コラーゲンが最も適していることを見出した.さらにヒト正常大腸上皮だけではなく,ヒト正常小腸,大腸腺腫,大腸がん,マウス小腸・大腸由来の上皮細胞をI型コラーゲンでコートしたトランズウェル上で2次元で培養できることを確認した.【平成28年度:計画2】生体内の腸管は平面的に存在しているのではなく,3次元に折りたたまれた構造(陰窩)が存在する.そこで,シャーレ上でin vivoにおける陰窩構造の作製を試みた.そのためにマウス線維芽細胞と腸管上皮細胞の共培養を行い,その後幹細胞培地の組成を改良することで,シャーレ上で陰窩様構造が観察された.しかし現時点での培養方法では,上皮細胞の細胞増殖が停止してしまい,全体的に萎縮した不完全な状態の培養である.
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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nature
巻: 538 ページ: 260-264
10.1038/nature19768
Proc Natl Acad Sci USA
巻: 113 ページ: E5399-407
10.1073/pnas.1607327113