研究課題
胞巣状軟部肉腫の凍結臨床検体を用いて、ヒトで発現する全90種類のチロシンキナーゼ(以下TK)に対するキノームプロファイリングを行い、腫瘍特異的に高発現し、新規治療標的として有望な数種類のTKを同定した。このプロファイルに基づいて同定したTKを主標的とする既存のTK阻害剤を選定し、in vitro, in vivoでの抗腫瘍効果を検討した。In vitro実験で3種類のTK阻害剤投与下における細胞増殖能を評価し、肉腫で使用認可されたPazopanibに比べ、Dasatinib, Cabozantinib投与下では有意な増殖抑制効果が認められた。またCabozantinib投与下では他の2剤に比べ有意な細胞浸潤抑制効果が認められた。またDasatinib, Cabozantinibの標的TKであるSrc、c-Metとその下流調節因子のリン酸化が薬剤濃度依存的に抑制された。In vivo実験では腫瘍細胞を皮下移植したゼノグラフトモデルマウスを作成し、TK阻害剤投与下で経時的な腫瘍径を比較計測した。阻害剤投与4週目で非投与群に比べ、Dasatinib, Cabozantinib双方の投与群で有意な腫瘍増大抑制効果が認められた。難治性疾患である胞巣状軟部肉腫の新規治療薬開発は切望されているが、疾患の希少性故に他の癌腫のような大規模研究や商業ベースの新薬開発が望めない状況にある。そのためこの研究の意義は新規治療法開発の最良の方法として他癌腫で使用されている既存のTK 阻害剤の適応拡大を目指すことで、できるだけ早期の臨床応用を可能にすることにある。今回の研究成果によってDasatinib, Cabozantinibが前臨床的に抗腫瘍効果を有し、同定されたTKが胞巣状軟部肉腫に対する重要な治療標的である可能性が示唆され、これら阻害剤の臨床応用が促進されることが期待される。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Plos one
巻: 12 ページ: -
10.1371/journal.pone.0185321.