遺伝性難聴の原因遺伝子として変異検出頻度が最も高いコネキシン26変異はギャップジャンクションプラークの崩壊やコルチ器の形態異常を来し、さらには2次的な外有毛細胞の脱落を来す。哺乳類の有毛細胞は再生能を有しておらず、外有毛細胞が消失した蝸牛は不可逆的な難聴の原因となる。この外有毛細胞の脱落は様々なタイプの感音性難聴に共通する現象である。本研究では様々な原因から生じる難聴に共通した現象である外有毛細胞の脱落を、カベオリンを介したシグナル伝達を中心に解析を行うことで外有毛細胞脱落のメカニズムを明らかにし、感音性難聴の予防法開発を目指している。 本研究ではコネキシン26変異モデルマウスの3週齢の脱落前の外有毛細胞の外側壁がフラスコ型に変形し、外側壁にカベオリン2が集簇し、蝸牛内のカベオリンが増加していることを同定した。また外有毛細胞の透過型電子顕微鏡での超微細構造の観察では、正常モデルでは波状の膜構造が変異モデルマウスにおいては破綻し平坦化し、外側壁周囲に多くの小胞体を認める事を同定した。 現在は有毛細胞の脱落を来す種々の病態モデルマウス、すなわち遺伝子改変難聴モデルと音響外傷モデルマウス、加齢性難聴モデルマウスを使用し、si-RNAの鼓室内投与による蝸牛内のカベオリンのノックダウンやメチルβシクロデキストリンの鼓室内投与による蝸牛内カベオリンの除去を行いカベオリンを介したシグナル伝達の外有毛細胞の保護や脱落に与える影響を解析している。
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