研究課題/領域番号 |
16H07191
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
白谷 望 上智大学, グローバル・スタディーズ研究科, 研究員 (40780119)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 中東 / 北アフリカ / 王制 / 君主制 / モロッコ / ヨルダン / 議会 / 選挙 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、モロッコとヨルダンを事例として、「如何なるメカニズムでアラブ君主制が安定を維持しているのか」という問いを考察することである。その際、両国において「名目的」政権交代を可能とする選挙と議会制度に注目する。具体的には、モロッコを事例としたこれまでの研究で提示した「与党・野党のローテーション制」モデル(時代状況に応じて、支配体制が与党と野党を入れ替え、体制の安定維持を図ること)を、ヨルダンとの比較から精緻化することを目指している。 平成28年度は主に、(1)先行研究・関連資料の読み込みと整理、(2)一次資料収集・解析という2つの作業を重点的に行った。 (1)の点については、まず権威主義体制研究、とりわけその下位類型である君主制型権威主義体制に関する議論を検討し、それらの問題点を明らかにした。そして、近年その発展が著しい権威主義体制下の制度、とりわけ議会と選挙制度の役割とその機能に関する研究と、権威主義体制の内実の多様性に注目してそれらを分類する作業を行う研究との連関がなされていないことが明らかとなった。あわせて、アラブ政治研究における議会や選挙、政党に関する先行研究を精読し、これまでの議論における重要な論点と未だに明らかになっていない課題を抽出した。平成29年度には、これらの成果をまとめたものを、レビュー論文」ないし「研究ノート」として投稿する予定である。 (2)に関しては、10月と3月にモロッコで、12月にはヨルダンにおいて調査を行った。主に、議会・議員や選挙結果に関する資料を収集した。現在は、収集した資料をデータベース化・翻訳する作業を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の研究計画として掲げた、(1)先行研究・関連資料の読み込みと整理、(2)一次資料収集・解析という2つの作業は順調に進んでいると考える。 本研究の最初の課題であったヨルダンの事例研究を通じた「与党・野党のローテーション制」モデルの妥当性の検討に関しては、ヨルダンの事例では同モデルの適用が困難であることがわかった。ヨルダンにおいては、1957年から92年まで政党活動がわたって禁止されており、またその後の選挙でも、当選者に占める無所属議員の割合が非常に高いためである。そのため、モロッコの事例から提示した「与党・野党のローテーション制」を可能とする条件は、ヨルダンでは成り立たないことが明らかとなった。 こうした成果を踏まえ、平成29年度には、「与党・野党のローテーション制」モデルの修正を行う予定である。場合によっては、アラブ君主制下の政府・議会・選挙とそれらの機能という関心は変えず、モロッコの「与党・野党のローテーション制」に代わるようなモデルを、ヨルダンの事例から提示することを目指す。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度においては、28年度に行った(1)先行研究・関連資料の読み込みと整理と(2)一次資料収集・解析という2つの作業を継続するとともに、(3)モロッコとヨルダンにおける政府関係者や政治指導者、ならびに有識者を対象としてインタビュー調査を並行して遂行する。 課題としては、「与党・野党のローテーション制」モデルの修正と精緻化のため、ローテーションに取り込まれる政党側の論理の解明を目指す。具体的には、モロッコとヨルダンにおける①各政党の構成、②政党を通じて行われるポストや政治資金等の配分、③選挙前連合・連立政権の形成プロセスを検証する。その後、これらの作業を通じて明らかになる政党側の論理も踏まえて、「与党・野党のローテーション制」モデルの修正と精緻化を図る。 また、場合によっては、アラブ君主制下の政府・議会・選挙とそれらの機能という関心は変えず、モロッコの「与党・野党のローテーション制」に代わるようなモデルを、ヨルダンの事例から提示することを目指す。
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