研究実績の概要 |
現在,我が国では急速に高齢化が進み,可撤性義歯治療の需要は増え続けている.義歯に伴う重要な問題点として,特にプラーク等の細菌が付着することによる残存歯や粘膜への為害作用, さらには誤嚥性肺炎の原因になりうることが挙げられる.さらに高齢化に伴って要介護者や認知症患者は増加しており,義歯を含む口腔衛生状態はますます悪化している.肺炎は我が国の死因第 3 位である国民の健康維持増進に重要な疾患であり,高齢者での誤嚥性肺炎と強く関連している.誤嚥性肺炎を予防するためには,感染経路である口腔内からの可撤性義歯を介した感染リスクを軽減させることが重要であり,全身の健康維持増進のために急務であるといえる.デンチャープラークの付着を抑制するために,紫外線を利用した光感応型MPCポリマーを開発し,簡便な操作で義歯にコーティングすることが可能となった.このコーティングにより,歯科関連細菌のバイオフィルム形成を90%以上抑制させることに成功し,実際に使用している義歯でも60%以上抑制していることを明らかにした. 研究成果を論文にまとめ,発表した.(Ikeya K, Fukunishi M, Iwasa F, Inoue Y, Ishihara K, Baba K:2-Methacryloyloxyethyl phosphorylcholine polymer treatment of complete dentures to inhibit denture plaque deposition.J Vis Exp, 118: 2016)
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今後の研究の推進方策 |
クロスオーバーデザイン臨床評価(小規模臨床研究)を行う. 被験者:アクリルレジン製の可撤性義歯を装着した患者約 20名.期間:コーティング後の義歯使用期間 1 週間,2 週間,1 ヶ月間 光感応型 MPC コーティングのバイオフィルム抑制効果を検討するため,二重盲検クロスオーバーデザインで臨床評価を行う.これによりバイオフィルム付着に対する様々な因子の相互作用の影響を明らかにする.
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