研究課題/領域番号 |
16H07200
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研究機関 | 昭和女子大学 |
研究代表者 |
大森 幹真 昭和女子大学, 人間社会学部, 助教 (50779981)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 書き困難 / 発達・学習・神経基盤 / コンピュータ支援指導 |
研究実績の概要 |
本研究は,定型発達児・発達障がい児・大学生を対象に,書き困難の原因を分析し,個別の書き困難に対応した支援方法を開発・構築し,その支援効果について学習・行動・神経基盤の評価方法を用いて解明することを目的とした。平成28年度の研究実施状況は以下の3点であった。①書き困難評価研究の実施:大学生を対象に,書字を行っている際の視線機能の分析と運動機能との関連を検討した。その結果,協調運動が苦手な成人群の方が,画面注視割合が低くなり,「見る」ことと「書く」ことの分離が困難であったことを示した。また,大学生群においては,文章の読み書きの間で,視線停留回数や平均注視時間には差が見られなかったも明らかにした。これらの成果は国内外の学会でそれぞれ発表した。②書き困難の評価・支援研究の伝播:第28回日本発達心理学会において,「書く」ことへの合理的配慮:行動を基盤にした評価と支援という表題で自主シンポジウムを開催した。その際に,書き困難同定のための行動評価指標や行動支援について討議し,研究成果を紹介した。③書き介入教材の開発評価:漢字のパーツを1つずつ順番に呈示し,それを観察することを求める書字支援教材を作成し,先行研究で明らかにしていた漢字全体を1つずつ順番に呈示する教材との比較・検証を行った。その結果,5名の書字が苦手な定型発達児と発達障がい児は漢字パーツを順番に呈示する教材の方が,漢字書字の獲得が早く,維持も長くなったことを示した。この研究成果は国際誌に投稿済みであり,現在再査読に向けて修正中である。また,上記の3点の成果や展望について,University of Oviedo(スペイン)のDr. Luis Pérez-Gonzálezの研究グループと集中討議を行い,国際共同研究として,連携可能な基盤を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学会発表を3件行い,英語論文も1本執筆し,査読後の修正中であるため。 大学生を対象にした書字の際の視線機能の分析を行い,運動機能や読み能力との関連や有意味・無意味文章間の相違,言語間の相違について検討し,それぞれ成果を上げている。これらの研究成果は国内外の学会において発表済みである。また,第一著者として,英語論文を執筆し,投稿した。同論文において,5名の書字が苦手な定型発達児と発達障がい児は漢字パーツを順番に呈示することで,漢字書字の獲得が早く,維持も長くなったという結果を国際誌であるThe Psychological Recordに投稿し,Major revisionという評価を受けた。しかし,多くの指摘は手続きの明確化を求めるものであり,結果や着想についての評価は高く,現在再投稿に向けて指摘について修正中である。
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今後の研究の推進方策 |
研究の推進方策としては,前年から引き続き,書き困難を同定するための評価と改善のための支援を継続して行う。特に,定型発達児と発達障がい児の評価研究データを追加し,その上で書き能力向上に付随した発達・行動・神経基盤の変容を検討する。研究を遂行する上での問題点は,視線追跡装置(Tobii)を用いての測定の際に,文章刺激の視写を行うため,疲れや嫌悪感を示す場合がある可能性がある。その際には課題間に適宜休憩を挟み,課題を実施する。1つの課題は研究協力者の書字速度にもよるが,8分以内には終了するように課題構成をしている。また,標準化検査の実施が想定よりも長くなってしまう可能性がある。その際にも実施を焦らず,15分を目安に休憩を挟みながら,検査を実施する。研究協力者と保護者の希望がある場合は,課題や検査ともに途中で中断し,再度ご来所頂いたうえで研究を再開出来る旨を事前に伝える。
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