本研究は,定型発達児・発達障がい児・大学生を対象に,書き困難の原因を分析し,個別の書き困難に対応した支援方法を開発・構築し,その支援効果について学習・行動・神経基盤の評価方法を用いて解明することを目的とした。平成29年度の研究実施状況は以下の4点であった。①板書スキル支援研究の実施:発達障がい児5名と定型発達児5名に対して,空間的な位置関係を保持したまま時系列的な刺激提示を行い,それを見つつ手元を見ない連続書字を獲得するかを検討した。その結果,発達障がい児の書字所要時間が減少し,画面注視割合が向上したことを明らかにした。②読み書き間の視線の比較研究:第29回日本発達心理学会でのポスター発表において,発達障がい児と定型発達児各5名が読み書きを行っている際の視線機能を比較した。その結果,発達障がい児群では,有意味文章の方が無意味文章の視写したときに比べて平均注視時間や視線停留回数が多くなっていたことを示した。③支援の再構成と書き介入教材での成果発表:昨年度開発した漢字パーツの継次的な提示と漢字全体の同時提示の学習効果を比較した研究が,The Psychological Recordに採択された。また,学習時における視線機能を発達障がい児と定型発達児各2名で比較・検討したところ,経次的な刺激提示の方が,刺激の同時提示よりも刺激に対する注視時間や注視割合が高くなったことを明らかにし,第35回日本行動分析学会年次大会においてポスター発表を行った。④結果の伝播と展開:学習と視線機能の関係を解明する本研究の成果から,心理学における「注意」機能に着目することとなった。それについて実験心理学の各分野から討議することを第29回日本発達心理学会において,自主シンポジウムで実施した。また、継続していた内容も含め、2年間で関連領域の論文が合計4本採択された。
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