本研究では、人間の視覚特性を考慮した検査者にやさしい目視検査環境の設計システムの構築を目指し、Ⅰ.欠点を確実に検出できる検査環境とⅡ.検査者への負荷が小さく、長時間の目視検査を継続できる検査環境について検討している。具体的には、まず、欠点の視認性を定量的に評価するための測定方法を考案し、照明条件などの検査環境に関連する要因を変動要因とする測定実験を通じて、欠点の視認性が高くなる検査環境の条件を明らかにする。その上で、これらの結果を踏まえて、検査すべき製品や検出すべき欠点の特徴に合わせて適切な検査環境を構築するための設計システムを開発することを目的としている。 本年度は、デジタルカメラで撮影した欠点の画像を用いて欠点の視認性を定量的に評価するための測定システムを開発し、その妥当性を検証した。また、目視検査を実施する製造業の協力を得て、実際の検査工程で発生した欠点を収集し、開発した測定システムを用いて照明の種類や照度、配置などを変動要因として欠点の視認性に及ぼす影響を評価した。その結果、欠点の発生メカニズムやそれによる特徴や特性によって、検査環境が欠点の視認性に大きな影響を及ぼすことが明らかになった。そして、得られた実験結果をもとに、ある欠点を対象として検査環境を設計し、トライアルとして構築してみると、従来は検出が困難とされていた欠点であっても容易に検出できるようになることが生産現場で確認された。
|