生産現場では、製品上にキズや汚れ、表面の凹み、塗料や印刷の色ムラなどの欠点がないことを保証するために、人間の視覚による目視検査が行なわれている。目視検査では、使用する照明の種類や数、配置などによって欠点の視認性が異なり、その視認性が検査精度や検査効率に大きな影響を及ぼしている。 そこで本研究では、まず、デジタルカメラで撮影した欠点の画像に対して、画像処理技術を用いて欠点の視認性を定量的に測定するためのシステムを開発した。次に、実際の目視検査工程を対象とした実態調査を通じて、使用されている照明の種類や数、配置、照明の明るさ(照度)、検査対象面の明るさ(輝度)を調査するとともに、開発した測定システムを用いてその視認性に及ぼす影響を調査した。さらに、照明の照度や検査対象面の輝度、欠点の存在する位置、欠点の特徴(大きさや濃さなど)を変動要因とする被験者実験を通じて、検査環境の相違と欠点の視認性の関係が欠点検出に及ぼす影響を総合的に検討した。 これらの検討を通じて、照明の照度や検査対象面の輝度によって欠点検出率は異なり、さらにその影響度合いは欠点の位置や特徴によっても異なることを明らかにした。また、得られた実験データを統合的に分析することで、実際の生産現場で検出すべき欠点の許容限度と一度の注視で活用する周辺視野に合わせて検査環境の設計するための方法論を考案した。以上の研究により、実際の目視検査工程で検査精度と検査効率を向上し、検査者の視覚機能やメカニズムの観点からムリのない目視検査作業を実現するための検査環境の設計システムを新たに提案した。
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