本研究は上古中国語(特に戦国時代)の音韻体系のうち、いわゆる以母(中古音 y-)の上古音とpreinitial *s-について考察を加えることを目的とする。2016年はT-typeとL-typeについて再検証し、以母を*d-から*l-へと置き換える仮説を検証。またpreinitialに関して、出土資料の「訊」を例に西の声母に*sn-を再構。2017年は「上古音以母」に関して初歩的な検討を加えた。以母が上古の2種以上(L-typeと口蓋垂音)の声母に由来することを再確認し、由来不明の以母を再構するための仮説を新たに示した。また「鉄」についても検討を加えたが、この点についてはさらなる検証を要する。
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