本研究は、初期認知症高齢者が、意思決定能力低下に備えて、自分の願いや希望、意思を表すために、家族や医療福祉関係者との対話を通してアドバンスケアプランニングを可能にするためのプログラムを開発することである。 初年度に作成したワークブックを、認知症ケアに精通した専門職者(精神科医、認知症看護認定看護師・老人看護専門看護師を含む看護師、介護福祉士、作業療法士、臨床心理士)に読んでもらい、ワークブックの使用感、正確性、有効性等についての意見を収集した。それらの意見をもとに項目内の言葉の選択や表示方法を一部改訂して完成版とした。また意見交換の中で、認知症高齢者本人との対話を通してアドバンスケアプランニングを可能にするには、本人の考えや思いをうまく引き出すために、聞き手側に対する教育的支援が必要であるとの結論に至った。そのためのプログラムとして、ワークブックを共に使用する家族または医療福祉関係者のためのワークブックガイド版を作成することとした。 ガイド版の作成は、病院の外来や介護施設等でアドバンスケアプランニングを進めていくことを想定した場合に、推進する病院・施設にとって時間的、人的な負担が少ないこと、また家族や医療福祉関係者にとっては手元において随時確認できる方法となることから、アドバンスケアプランニングが広く推進されるためには妥当と考えられた。具体的には、各項目の問いの本質的な目的や意味、具体的にどのような例を挙げて考え話してもらうとよいか等についての解説を、本人用のワークブックと1ページ毎に対応させ、本人用と同規格全22ページで作成した。本人と、家族または医療福祉関係者それぞれがワークブックを活用することによって、対話を通して初期認知症高齢者本人の思いや考えを知り、認知機能低下時にも本人の意思を尊重した選択と意思決定につながると考えられた。
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