研究課題/領域番号 |
16H07206
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研究機関 | 大正大学 |
研究代表者 |
石村 雄一 大正大学, 地域構想研究所, 助教 (30783534)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 産業廃棄物最終処分場の立地状況調査 / 産業廃棄物最終処分場の立地決定要因分析 / 最終処分場維持管理積立金制度 |
研究実績の概要 |
最初に、産業廃棄物最終処分場の詳細な立地状況について調査をおこなった。調査では、分析の際に必要となる施設の設置場所、処理期間、処理能力、埋め立てた廃棄物の種類などの情報を得ることができる資料を収集した。その後、得られた資料をもとに産業廃棄物最終処分場に関するデータベースの構築に取り掛かかった。 次に、データベースを用いて2つの研究に取り組んだ。1つ目の研究としては、産業廃棄物税や、他地域からの産業廃棄物の搬入規制が産業廃棄物最終処分場の新規立地に与える影響について分析をおこなった。分析の結果, 1997年と1998年にかけておこなわれた廃棄物処理法の改正以降に新規立地される最終処分場の数が大きく減少したことが明らかになった。また計量経済分析の結果から、産業廃棄物税を導入している自治体や、域外産業廃棄物の搬入規制を実施している自治体ほど、最終処分場の新規立地件数が少ないことが明らかになった。なお、この研究については廃棄物資源循環学会論文誌へ投稿し、現在は審査中である。 2つ目の研究としては、最終処分場維持管理積立金制度が産業廃棄物最終処分場の周辺の地域経済に与える影響に関する研究である。この研究では、政策の実施が住宅地価にどれだけ影響を与えたのかについて計量経済学的手法を用いて分析をおこなった。分析の結果、積立金制度の実施によって最終処分場の周辺の住宅地価が予測とは反対に減少したことが明らかになった。なお、この研究については、現在はさらに詳細な分析をおこなっている状況である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は、当初の計画どおり順調に進んでいる。これは調査を円滑かつ効率的に開始できるように、事前に調査先となる自治体のリストアップ、申請書の作成、データ入力のためのフォーマット作成といった準備を完了させていたことや、資料の入手先について各行政機関に対して調査を実施していたことなどが、本研究課題を順調に進めることができたことにつながっている。 なお、平成29年度の研究についても、作業にかなり膨大な資料とデータを扱うこととなり、相当の手間と時間が必要となることが予測されるが、研究スケジュールに基づいて正確かつ着実に作業を進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、主に次の2つの研究に取り組む。1つ目の研究は、産業廃棄物最終処分場の空間的集積と地域経済に関する研究である。この研究では、廃棄物最終処分場の立地傾向と地域的特徴について分析をおこない、これまでどのような地域に産廃処分場が集中してきたのか、また今後どのような地域に施設が集中すると予測されるのかについて、空間計量経済モデルを用いて明らかにする。また、廃棄物最終処分場の空間的集積が地域経済に与える影響についても空間計量経済学や計量経済学の手法を用いて明らかにする。 2つ目の研究では、政府や各地方自治体が実施する政策が産廃処分場の立地に与える影響について明らかにする。検討する政策としては、優良業者認定制度や住民紛争防止条例などであり、これらの政策が施設の立地や地域経済にどのような影響を与えるのかについて空間計量経済モデルを用いて分析をおこなう。 最後に、本研究では研究(A)と研究(B)の結果を踏まえて、放射性廃棄物の貯蔵施設や原子力発電所を中心としたあらゆる迷惑施設の空間的配置に対しても発展させ、今後、政府が取るべき政策のあり方についての検討をおこなう。加えて、2年間におけるすべての研究についてとりまとめ、ヨーロッパや東アジアにおける環境経済学の国際学会、および国内の環境経済・政策学会、廃棄物資源循環学会、日本経済学会などにおいて積極的に研究発表をおこなう。また、環境経済学のトップジャーナルである「Journal of Environmental Economics and Management」や「Ecological Economics」といった海外論文誌への投稿に向けた論文の執筆作業に着手する。
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