研究実績の概要 |
本研究では、近赤外分光法(NIRS)を用いて、「物体認識」と「音声言語」の視聴覚統合における脳内機構の発達を検討することを目的とする。 本年度は、主に乳幼児を対象に、「音声言語」の視聴覚統合の脳内機構を検討した。実験では、日本人の母音(/a/, /i/)の発話を撮影し、音声と口の動きが一致した刺激(音声/a/、口の動き/a/)と不一致の刺激(音声/a/、口の動き/i/)を用いて、刺激観察中の上側頭溝に相当する領域の脳血流量をNIRSにより測定を行った。仮説として、音声と口の動きのマッチングが発達している場合、一致刺激観察中の乳児の左側頭の脳血流量が増加すると予測した。実験の結果は、8-9ヶ月の乳児では、音声と口の動きが一致した刺激を観察する際、不一致の刺激と比べ、左側頭における脳血流量の有意な増加が見られた。この結果、生後8ヶ月から、左上側頭溝を含む左側頭領域の活動が音声と口の動きの統合に関与することが示された。 今年度は、これまでに得られた成果を、国内学会(視覚学会)や国際学会(Vision Science Society)、複数のシンポジウム(International Society for Theoretical Psychology、基礎心理学フォーラム、間とあいだの現象学)にて発表を行い、国際誌(Experimental Brain Research)での報告を1報行った。
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