本年度は、渡米調査と日本の雑誌の総合的な調査に基づき、ゲーリー・プランのカリキュラム史的意義の検討、および日本における同プラン情報普及に関する検討を行った。さらに、昨年度の中・高学年カリキュラム改革に関する資料調査に基づき、中・高学年カリキュラム開発に伴う教師のカリキュラム・デザイン能力形成について考察を行った。 1.ゲーリー・プランのカリキュラム史的意義については、公立学校におけるカリキュラムの量的な拡大だけでなく、共同体の維持という教育目的を基にカリキュラム全体が有機的に組織されるとともに、各領域や各学科が脱領域的もしくは相関的に組織されていた可能性を指摘した。また、米国での同プランに関する雑誌記事や諸資料の調査を通して、ラディカルなカリキュラム改革を推進していく上で、その担い手となる教師をどのように養成し、力量を形成していくのかが課題となっていたことが明らかになった。 2.日本におけるゲーリー・プランに関する雑誌記事および書籍の総合的な調査に基づき、ゲーリー・プラン情報の普及について明らかにした。当時の多くの雑誌記事では、ゲーリー・プランは経済効率に優れた学校改革のモデルとして紹介された。一方で、教育効果をも維持するプランだと高く評価するものや、「学校の社会化」という教育原理に注目したものも存在した。また、同プラン情報普及の特徴として、教育調査会などの教育行政関係者から注目されていたことを指摘した。 3.日本の小学校の事例研究では、特に奈良女子高等師範学校附属小学校において、サティス・コールマンの「創造的音楽」が教育実践や教師のカリキュラム・デザイン能力形成に与えた影響を検討した。その結果、「創造的音楽」が同校の唱歌専科訓導である幾尾純における創造的な実践開発を促す契機となっていたことが明らかになった。これは「創造的音楽」が、その実践よりも思想に力点が置かれていたためである。
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