本研究は、これまで在韓日本人コミュニティ研究においてあまり注目されてこなかった宗教的コミュニティに関する理論的枠組みと事例研究を拡大し、①どのような特性を持つ人々が集まり、②彼らが韓国人・韓国社会とどのように関わっているのかを明らかにすることで、③在韓日本人コミュニティ研究に更なる視点を提供し統合的な理解を行うことを目的とする。 以上に示した課題に対し、本研究では、在韓日本人の宗教コミュニティを対象に、日韓両国側の立場からその位置づけを捉える実態調査を行った。その上で、社会的背景(在韓日本人の移住史・日韓の歴史)から、在韓日本人コミュニティにおける宗教コミュニティの立ち位置を捉え、「宗教」を介したコミュニティ形成が、韓国社会との共生にいかに結びついているのかといった点を検討した。その際、SJC(ソウル・ジャパン・クラブ)など、既存の日本人コミュニティとの比較も視野に入れ、現代在韓日本人コミュニティの現状を統合的に把握した。 ソウル日本語ミサグループやソウル日本人教会などといった在韓日本人の宗教的コミュニティに対する調査を通して、国交正常化以降発足した在韓日本人コミュニティとは異なった「開かれたコミュニティ」であることが明らかになった。今日、これら在韓日本人の宗教的コミュニティは、在韓日本人を中心とした宗教的コミュニティでありながらも、日本から帰国した韓国人信者や韓国キリスト教会との交流、さらには地域住民との交流を行っている。この点は、キリスト教が強勢である韓国社会において、キリスト教の教えを共有するという姿勢のもとに成立している行為として理解でき、日韓関係を理解する際に相互の歩み寄りのきっかけとなっている。今後もこれら在韓日本人の宗教コミュニティは、韓国社会との共生の姿勢を保持しながら、韓国社会との協働関係を構築していくと考えられる。
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