研究課題/領域番号 |
16H07213
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
高橋 有希 東京歯科大学, 歯学部, 助教 (30778626)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 低ホスファターゼ症 / 遺伝子治療 / アデノ随伴ウイルスベクター / アルカリホスファターゼ / 顎骨解析 / 歯牙支持組織解析 |
研究実績の概要 |
低ホスファターゼ症(HPP)は、硬組織の石灰化不全、呼吸困難、痙攣発作、乳歯の早期脱落を主徴とする遺伝性疾患であり、本邦においては致死性である周産期型や乳児型の頻度が高い。現在、酵素補充療法が行われているが、酵素の半減期が短いため、長期反復投与の必要性があり、また侵襲性も高い。そこで申請者は、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターによる遺伝子治療実験を行うことにより、単回投与で延命効果を得ることに成功している。しかしながら、硬組織石灰化不全の治療効果に関しては課題が残され、低身長や易骨折性、乳歯の早期脱落に対しての有効な治療法の開発には至っていない。 したがって、本研究課題では、出生直後のHPPモデルマウスに骨親和型ALP発現AAVベクターを筋肉注射(治療群)し、生後90日齢で解析を行った。 その結果、治療群の顎骨および歯牙支持組織に関して、切歯の石灰化不全と臼歯の歯根露出が認められた。形態計測解析において、下顎骨全長、歯槽骨長、第一臼歯全長、その他いずれの項目においても同日齢正常マウスと比較して有意に低値となった。また、組織学的解析では歯槽骨頂レベルの低下や、無細胞セメント質の欠如が認められた。以上の結果から、治療群においては延命効果や行動量の改善が得られるものの、硬組織の完治には不十分である可能性が示唆された。 また、血中のALP活性を20 U/mLまで上昇させた結果、大腿骨の形態不正や伸長不全の改善が確認された。したがって、硬組織に十分な量のALPを補充することにより、その石灰化不全の改善が可能であることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年次計画において、HPPモデルマウスに筋特異的プロモーターを使用したAAVベクターを筋肉注射し、遺伝子治療マウスの顎骨および歯牙支持組織における治療効果を明らかにすること、および硬組織に分布するALP濃度を上昇させ、硬組織における石灰化不全の改善の可能性を検証することを目標としていたが、おおむね計画通りに実施できており、遺伝子治療マウスの顎骨および歯牙支持組織における治療効果、および硬組織に分布するALP濃度を上昇させ、硬組織における石灰化不全の改善の可能性を示す事が出来た。
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今後の研究の推進方策 |
AAVベクター投与および血中ALP濃度を増加させたことによる全身および局所の安全性に関して、免疫反応や異所性石灰化などの副作用がないか、呼吸機能や行動解析による機能評価など、引き続き検証していく予定である。
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