研究実績の概要 |
本研究では,Cre/loxP 発現制御システムを利用した遺伝子改変マウスを利用して,骨細胞特異的にEGFPを発現させたマウスを用いることにより,骨細胞において特異的に発現する遺伝子の解明を目指す。 昨年度は主に骨細胞特異型EGFP発現マウスの作成を行い,遺伝子改変マウスより骨髄間葉系幹細胞 (BMSC) の採取ならびに骨細胞様細胞への分化誘導とEGFPの発現確認等を行った。今年度では,骨分化誘導後2週間のBMSCをFACSにてEGFP陰性および陽性細胞に単離した後,DNAマイクロアレイ法にて骨細胞への分化前後における発現変動遺伝子の解析を行った。 DNAマイクロアレイよりBmp8b, Pdgfc, Cryab等の遺伝子群において,EGFP陰性・陽性細胞間で有意な発現変動が認められた (p < 0.001, FDR < 0.05)。さらに発現変動遺伝子についてリアルタイムPCR法による解析を行ったところ,EGFP陰性細胞と比較し,EGFP陽性細胞においてCryab mRNA発現量の有意な亢進を認めた (p < 0.001)。BMSCsの骨分化誘導時における経時的なmRNA発現量を解析すると,CryabはDmp1と同様の発現パターンを示し,Cryabが骨細胞への分化ならびに硬組織形成に関与していることが示唆された。 遺伝子改変マウスの使用により,骨細胞への分化に関与する遺伝子群の候補が示された。今後はsiRNAによる目的遺伝子のサイレンシング等を行い,さらなる機能解析に努める。本研究の結果は,歯槽骨をはじめとする硬組織への分化制御機構の解明につながるものと考える。
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