筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動ニューロン特異的な進行性の神経変性により筋力低下・筋萎縮を引き起こし、発症から5年以内に呼吸機能までもが全廃する悲惨な疾患である。TDP-43は9割のALS患者の運動ニューロンにおいて異常局在・蓄積が認められることが知られている。 本研究は、TDP-43のRNA品質管理機能に着目し、(1)TDP-43機能低下の発生を決定する因子の同定、(2)TDP-43の機能低下に起因するRNA代謝異常を検出する因子の同定、の2つを目的としている。 TDP-43は自己スプライシング機能を持つことが知られているが、変異型TDP-43ノックインマウスの脳内において、内因性TDP-43のスプライスパターン解析を行ったところ、顕著に増加する未知のスプライスバリアントが存在することを発見した。さらに、TDP-43の標的RNAのスプライスパターン比率を解析したところ、疾患マウスの脳内において標的のスプライシング異常が起こっていることがわかった。このことからTDP-43ノックインマウスの脳内ではTDP-43の機能低下が引き起こされていると推測される。この標的について、変異型TDP-43ノックインマウスの白血球においても同様に解析を行ったところ、運動障害発症前の疾患マウスにおいてスプライスパターンの比率が変化していることがわかった。変異型TDP-43ノックインマウスでは、脳内だけでなく末梢白血球においてもTDP-43のスプライシング機能低下によるRNA代謝異常が起こっていることが示唆された。以上より、TDP-43および複数のスプライシング標的を組み合わせることにより、症状の発症前にALS発症リスクを検出できる可能性が示された。
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