間葉系幹細胞を使った血管再生治療は狭窄予防に有効な可能性がある。申請者は細胞シート法を応用し新規血管再生治療の確立を目指す。本研究では、脂肪間葉系幹細胞シートの血管狭窄予防効果を検証するとともに細胞懸濁液法と比較する。 本年度は、ラットと、ラット脂肪由来間葉系幹細胞を用いた。また、細胞移植法としては血管外膜側細胞懸濁液滴下移植法と血管外膜側細胞シート移植法を用いて実験を行った。具体的には、ラット大腿動脈ガイドワイヤー障害モデルを作成し、1.未治療群 2.細胞懸濁液群 3.細胞シート群の3群で移植2週間後に組織学的な比較を行った。 結果は、細胞シート群は、細胞懸濁液群、未治療群の2群と比較して優位に内膜中膜比が低かった。この結果は、脂肪間葉系幹細胞シート移植は血管障害に起因する狭窄を抑制しうることを示している。 また、GFP陽性ラット脂肪由来間葉系幹細胞と、ルシフェラーゼ陽性ラット脂肪由来間葉系幹細胞の2種類の細胞を用いて、移植した細胞の生着率を細胞懸濁液と細胞シート法で比較を行った。結果は、両細胞種ともに細胞シート法で優位に細胞の生着率が高いことを確認した。 本年度の実験により脂肪間葉系幹細胞シートは、細胞懸濁液に比べて高い生着率をもつとともに、高い血管狭窄抑制効果を持つことが分かった。今後は、脂肪由来間葉系幹細胞の血管狭窄抑制に関する有効因子を検証するとともに、大動物実験へむけさらなる検証を行う予定である。
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