研究課題/領域番号 |
16H07226
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
伊藤 真理 東京理科大学, 理工学部経営工学科, 助教 (20778211)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | オペレーションズ・リサーチ / スケジューリング / ヒューリスティック / 数理計画モデル / 手術室の効率化 |
研究実績の概要 |
本年度は,(1)問題のモデル化:手術の終了時刻の不確実性を考慮した定式化を提案する.(2) 解法の提案:順序付け規則を提案する.を以下のように遂行した. (1)本年度は,手術の終了時刻の不確実性を考慮したモデル化を行った.そして,手術の資源として重要な血液製剤の在庫管理を行うモデルを提案した.さらに,手術の終了時刻の不確実性についてはエージェントシミュレーションによる表現の可能性を見出した.ここでは手術の終了時刻が確定的なモデルについて有効性を示した.その結果,数理計画モデルを用いることで,スケジュールの作成時間の削減が可能となった.さらに,スケジュールの質も改善した.具体的には,数理計画モデルで作成したスケジュールで実際の手術室を運営した場合,手作業で作成したスケジュールで運営した場合よりも手術室の閉室時刻からの延長時間を削減することが可能となった.また,各手術室に複数の手術が割り当てられているとき,ある手術の終了時刻の延長による他の手術の予定開始時刻の変更を削減することが可能となった. (2)本年度は,解法としてヒューリスティックな手法の提案を行った.この提案手法を問題設定が複雑な人間ドックのスケジューリング問題に適用した.その結果,この提案手法が検査間の待ち時間を削減するのに有効であることが明らかになった. 本年度は,上記の成果の一部を,講演会や国内の学会,論文誌にて発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画を多少変更はしたが,おおむね順調に進んでいるものと考えられる.それぞれの研究項目についての詳細は以下のとおりである.(1)当初の予定どおり,手術の終了時刻の不確実性を考慮したモデル化を提案した.しかしながら,不確実性を考慮した確率計画モデルは求解が困難であることや求解に時間がかかる.そのため,手術の終了時刻の不確実性を異なる手法で表現することを試みた.今回,エージェントシミュレーションによる手術の終了時刻の不確実性の表現の可能性を見出した.このように手術の終了時刻の不確実性の表現の仕方については,異なる方法をも視野に入れたが,大きな変更でなかったと考える.これに加え,手術の資源として重要な血液製剤の在庫管理を行うモデルを提案したことは,大きな進捗であったと考える.(2)本年度の計画では,予定どおり順序付け規則をヒューリスティックな手法によって提案を行った.この提案手法をまずは問題設定が複雑な人間ドックのスケジューリング問題に適用した.その結果,この提案した手法が検査間の待ち時間を削減することに有効であることが明らかになった.今後,手術室のスケジュールの順序付け規則として使用することで,即座に手術を適切な手術室に割り振ることができると考える.本年度は,上記項目のいくつかの進捗を国内学会や国際会議で発表し,関連研究者と議論することができ,来年度の研究目標が明確になった.
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今後の研究の推進方策 |
今後はこれまでの項目,(1)と (2)の提案モデルを手術室のスケジューリングへ適用していき,(3)有効性の検証:提案する手法の有効性を示すとともに, 実際の手術室の運営に役立つ情報や知見を見出すことを考えている.それぞれの項目の今後の研究の詳細は以下のとおりである.(1)手術の終了時刻の不確実性の表現方法を選定する.本年度,有効性が示された確定的なモデルに手術の終了時刻の不確実性を加えたモデルを提案する.(2)提案したヒューリスティックな手法を手術室のスケジューリング問題に適用し,その手法の適応度を分析する.(3)有効性の検証:提案する手法の有効性を数値実験より示すとともに, 実際の手術室の運営に役立つ情報や知見を見出す.(1)と(2)の提案手法の有効性についてデータを用いた数値実験によって検証する.検証は,実用的な時間内で解を得ることができているか,全手術室の終了時刻が実際よりも早くなっているか,手術室の運営コストが減少可能か,をポイントとする.さらに,「手術室の運営コストが何%削減することができる.」や「手術の種類によって,手術室を変更するのがよい.」などの知見が,データを用いた計算結果から得られる可能性がある.そのため,運営コストについての比較を行う.さらに,計算結果をスケジュール上に表し,視覚化できるようにする.また,研究成果については昨年同様,それぞれの項目における進捗を国内学会や国際会議で発表すると共にオペレーションズ・リサーチや医療系のジャーナルに投稿することを考えている.
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