スコットランドにおいて16世紀前半は自国語文化形成の黎明期である。ラテン語で執筆された自国の歴史書を自国語に翻訳することは、より多くの国民に自国の歴史を広め、統一した自国理解、国家意識を浸透させることを意味する。ジョン・ベレンデンの翻訳はこの一例である。しかし、The Mar Lodge Translatorの翻訳は個人、もしくは極めて小さな範囲でのプロジェクトである。誰がどのような目的でこのプロジェクトを推進したのか、また歴史書の翻訳作品にどのような有用性を見出していたのかを明らかにすることはベレンデンの作品とは異なった角度から自国語文化形成の様相を明らかにするうえで極めて意義深い。
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