これまでのアート研究は美術系大学における「美学」として、または、美術館や美術団体を運営する観点からの「アート・マネジメント」の研究が主流であった。一方で、マーケティング領域では、ほとんど研究が行われておらず、また、日本のアート・マーケットについて十分な統計データも整備されてこなかった。本研究は、日本のアート・マーケットについて調査を実施して需要と供給の両面から定量的なデータ収集を行い、統計解析手法を活用して精度の高いマーケット分析を行うことを目的とする。 前年度までに、海外の既存研究を踏襲したアート作品の購買モチベーションの評価フレームワークが日本の現代アート・コレクターに適用可能かどうかを、小規模の定性調査およびインタビュー調査によって検証し、元の14個のアート作品購買モチベーションを、日本の現状に合わせた6カテゴリに整理した。本年度は、さらに約1万人の対象者に対し大規模な定量調査を実施し、上記のアート作品購買モチベーションと性年齢などの属性に加えて、サイコグラフィック(心理的)特性やライフスタイル(生活興味・関心)特性も考慮した類型化分析を実施した。結果として、日本の現代アート・コレクターが4つの類型(バランス調和型、オタク型、未成熟型、インテリ型)に分類できることを明らかにした。これらの研究成果は、日本マーケティング学会にて学会報告を行い、査読付き論文誌への投稿を行っている。また、先進的なアート・マーケティングを実施している国内外のアート・フェスティバルをヒアリング調査し、事例分析として雑誌論文に掲載した。
|