H29年度の前半はH28年度に引き続き,Leung-Yau-Zaslowの結果の拡張をした.H28年度中に得られていた結果を論文にまとめ,その論文はH29年度にMath. Z.から出版された.Leung-Yau-Zaslowの結果は特殊ラグランジュ部分多様体がトーラスファイブレーションの切断のグラフとして書ける場合にそのフーリエ向井変換が変形エルミート・ヤン・ミルズ接続になるというものである.この結果を切断のグラフとは限らないような場合に拡張した.ただし現状でも全ての場合に拡張したわけではない. また,平均曲率流の特異点の形成に関しては,「general type I singularityはspecial type I singularityか?」が争点であった.これについても研究を行った.完全な解決とは言えないが,初期部分多様体がPinching条件を満たせば,答えはYesであるということを証明することができた.証明のアイデアはリッチフローの方で確立されたPigola-Rimoldi-Settiの結果とEnders-Muller-Toppingの結果のアナロジーである.リッチフローの結果を平均曲率流に応用することができた例である.この結果に関しては京都大学で講演し,証明はRIMS講究録に書いた. また,夏に中国の清華大学に16日間滞在し,Xiaoli Hanと共同研究を行った.目的は「almost Calibratedなラグランジュ部分多様体を初期値とする平均曲率流はI型特異点を起こさない」ということに厳密な証明を与えることであった.この課題に関しては,私とHanの二人では満足な回答を与えることはできなかった.しかし,HanとSunが最終的には厳密な証明を与えた.結論としてはpseudo locality theoremは不要で,Whiteの正則性定理だけで十分であった.
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