昨年度に引き続き,通信情報量に制約のあるネットワーク化制御系において,観測信号の取得時刻情報を用いた状態推定手法,安定化手法について検討を行った.時刻情報と制御対象のモデルを用いて推定および制御を行う際に,時刻情報の不確かさと,モデルの不確かさによって生じる誤差が問題となる.本年度はこれらについて,以下のような成果を挙げた. 1:時刻情報の不確かさを考慮した状態推定・安定化について,観測信号が量子化されている場合の解析を行った.時刻情報の不確かさと量子化が同時に存在するために漸近安定化は達成できない.そこで,原点近傍から逸脱しないことを制御目的として解析を行った.これはセンサ解像度や通信路の帯域幅が小さい場合に有用な結果である. 2:同じく時刻情報の不確かさを考慮した状態推定・安定化についてこれまでに,制御対象が複数のモードをもつ場合,その時間発展の差を利用して時刻情報の不確かさをキャンセルする方法を提案していた.本年度はこれを拡張した.具体的には,これまで相異なる実固有値をもつ場合について主張できていた内容を,論文共著者による平均値の定理を用いたアイディアを用いて複素固有値の場合にまで一般化できた. これらの成果と,昨年度行った,モデルに不確かさがある場合に制御系を安定化するために必要・十分な通信情報量に関する成果を,学術雑誌IEEE Transactions on Automatic Control,Automatica(査読有り)に投稿し,採択された.
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