平成29年度は,平成28年度に調和バランス法を用いて定式化した,接触を考慮したき裂による非線形定常散乱問題を記述する境界積分方程式の求解,及び解の安定性解析を行った. 上記の境界積分方程式は空間離散化を施すと,連立非線形方程式となる.単に入力パラメータを固定して解を求めるのではなく,入力パラメータを変化させたときの解の挙動を調べるため,numerical continuation methodを適用した.解析では,入力パラメータである入射周波数,及び静的な開口変位を変化させた場合の解の追跡を行った.その結果,共振が発生しやすいと考えられる特定の解析条件において,解の分岐が発生し,分調波成分を含む解が非自明解として現れることが確認された. 得られた解の安定性を調べる必要があるため,Floquet理論に基づき,局所漸近安定性を調べるための境界積分方程式の定式化を行った.提案手法は基本的にHill’s methodの応用であるが,最終的に非線形固有値問題に帰着されるため,Sakurai-Sugiura methodを用いて数値的に固有値を求めることで安定性の判別を行った.また,安定性解析の妥当性は,時間領域解析の結果と比較することによって確認を行った.安定性解析の結果によって,解の分岐を伴う分調波成分を含む解が安定解であることがわかり,解の分岐を伴う分調波共振によって分調波の発生が生じていることが明らかになった. 平成29年度は本研究内容に関して国際会議1件,国内会議4件の報告を行った.また,査読付き論文は国内誌に1編掲載済,国際誌に1編投稿中である.
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