研究課題/領域番号 |
16H07236
|
研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
涌井 将貴 東京理科大学, 工学部建築学科, 助教 (40778205)
|
研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
|
キーワード | 加速度微分 / 損傷評価 / 構造ヘルスモニタリング |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、地震時に計測された加速度応答記録を高次微分した物理量に着目し、この物理量と構造物の非線形挙動との理論的関係から、構造物の損傷度推定手法を提案し、それに基づいた建築物の残存耐震性能評価指標を提案することを目指すものである。 これまでの研究において、1質点系として考えられるシステムでは、加速度応答の2階微分(以下、snap)によって、非線形挙動を検知することは可能であることを解析的・実験的に示している。特に、高次微分の際に問題となる計測ノイズについても、定量的な対処方法を提案しており、実測結果においても、構造物の非線形挙動が可能であることを示している。しかし、構造物がどの程度損傷したのかを評価する方法については十分な検討がなされていない。そこで本研究課題では、これまでに研究してきた非線形性検出理論を拡張し、損傷度を評価する手法を提案し、その適用可能性について検討する。 本年度は、これまでに進めてきたsnapによる非線形性検出理論を拡張することで、降伏点の検出から降伏点での相対速度を推定する方法、降伏後の塑性変形量を推定する方法、および残留変形を推定する方法を提案し、その適用性を解析的・実験的に検討してきた。解析結果による検討においては、提案手法の適用が可能であることを示した。一方で、実際の構造物への検討では、実測結果による加速度記録に含まれる計測機器に起因する計測ノイズの影響によって、評価精度のばらつきが大きくなるため、次年度以降において、より定量的な評価・検討が必要である。 また、構造部材レベルの局所的な評価理論については、次年度以降、1質点系から骨組系への適用性を拡張して、理論を構築し、適用を検討する必要がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度予定した計画としては、「理論構築」「数値解析による検証」「振動台実験の計測データによる検証」の大きく3つが挙げられる。 「理論構築」については、概ね達成できており、損傷度および残存耐震性能の指標として有益と考えられる塑性変形量、および残留変形の推定方法を提案してきた。次年度以降において、実証作業を行う準備が完了しており、併せて局所的な部材レベルでの評価理論を検討する。 「数値解析による検証」については、まずは基礎的な段階として、簡易モデルである1質点系モデルにおける適用性を検証した。構築した理論の適用性を確認できているため、当初予定していた解析モデルよりも簡易なものに留めることにし、次年度以降は振動台実験における計測データに焦点を当てて検証する。 「振動台実験の計測データによる検証」については、振動台実験の計測データの収集・整理を完了した。解析モデルによる理論の適用性を確認できたことから、次年度以降は、整理した計測データを用いて検証を行う。 若干の方針修正はあるかが、概ね当初計画した目標は達成したものと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策は、概ね当初の計画通りとする。 ただし、当初予定していた振動台実験への参画が困難となったため、解析的検討を中心とし、振動台実験への適用性検討は、現状で計測データを収集できた実験について焦点を当てて検討する。
|