研究課題/領域番号 |
16H07241
|
研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
小橋 文子 東洋大学, 経営学部, 助教 (30528922)
|
研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
|
キーワード | 国際的工程間分業 / 貿易政策 |
研究実績の概要 |
本研究は、国境をまたいで生産工程が分散立地されるようになることで貿易政策の役割や貿易協定の必要性がどのように異なってくるのかを明らかにすることを目的としている。初年度(平成28年度)は、政府は貿易政策決定が企業の生産工程レベルの立地選択へ与える影響を考慮したうえで最適な関税の組み合わせを選ぶ、という問題意識に立ち、企業の生産立地選択を内生化して政府の最適関税政策を理論的に分析することから始めた。
具体的には、North とSouth の(疑似)一般均衡モデル(2 国2 財(および連続中間財)1 要素)を構築し、最終財が一連の中間財を組立てて生産されるケース、すなわち、生産段階が二つのケースを基礎モデルとして理論分析を行った。各中間財の要素費用が国家間で異なる一方、国境を越えた中間財の調達には貿易費用(二国の政府による関税/補助金および外生的な輸送費)が掛かることから、最終財メーカー企業は、最終組立工場の立地次第で、より低費用で調達できる国から各中間財を調達する。最終財メーカーは、中間財の調達に係る総費用に加え、組立に係る要素費用の国家間差異、最終財を最終需要地に輸送するための費用(中間財と同様、国境を越えて輸送される場合には関税/補助金と外生的な輸送費が掛かる)を考慮したうえで、組立工場をどこに立地するのかを決める。
基礎モデルによる理論分析により、両国が自由貿易政策(最終財および中間財の関税/補助金=0)を選択することが、世界全体の厚生を最大化するような効率的な政策レジームであることを示した。そして、ナッシュ均衡下の最適関税を計算し、それらが世界全体の厚生を低下させるという意味において非効率であることを示した。最終財のみの貿易を想定した従来の理論モデルから導かれる示唆とは異なり、企業の生産立地選択に対する貿易政策の役割を明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、関連文献の手法を参考にして、基礎モデルを3 国のモデルに拡張したり、関税/補助金に加えて国内政策を導入したりすることで、世界全体の厚生を改善するような貿易協定のあり方について分析する予定であったが、現時点では、理論モデル上の計算結果を解釈し、考察することができていない。これは、10月末に本研究の進捗を報告する機会を得た際、貴重なコメントを多数いただき、それらを踏まえた改訂作業に時間を取られてしまったためである。本年度の計画はやや遅れてしまったが、長期的な視野では順調に進んでいるものと認識している。
|
今後の研究の推進方策 |
まずは、基礎モデルを3 国のモデルに拡張したり、関税/補助金に加えて国内政策を導入したりすることで、世界全体の厚生を改善するような貿易協定のあり方について分析したものを論文としてまとめられるよう注力したい。次年度は関連文献の著者を訪問することが複数回予定されているので、活発なディスカッションおよびアドバイスを踏まえて、理論分析結果を論文としてまとめていきたい。
また、平成29年度は、理論分析から導かれる仮説を実際のデータと結びつけて検証するべく、実証分析を行うことが当初計画であるので、上述の理論分析を実証分析につなげていけるよう最大限の努力をしたい。
|