研究実績の概要 |
本研究の目的は、近年進展の著しいさまざまなデータを自動収集する技術について、各国のプライバシー・個人情報保護制度の整備・運用を比較検討することにある。IoT(Internet of Things)やビッグデータと呼ばれる技術においては、あまり意識することなく個人に関する情報が収集されることも多いため、従来とは違ったプライバシーや個人情報に関する懸念も大きくなっている。 平成29年度においては、前年度に行った諸外国の制度に関する成果をもとにさらに研究を進め、基礎的な文献調査を継続するとともに、国際会議や学会研究会等への参加により、関連分野の研究者と議論を重ねた。そして、各国と我が国の制度整備や法適用の状況を比較し、特に我が国におけるデータ自動収集に関する制度の課題と、あるべき検討の方向性の提示を試みた。 具体的な成果として、まず、データの自動収集の進展がもたらす集積によって、個人情報保護制度の利用目的規制の重要性が高まっていることを示し、体系的な論文としてまとめている(「データ集積の急増と個人情報の利用目的規制」)。また、こうした収集情報のなかで特に重要な、位置情報("An attempt at the secure use of GPS information by the PPC, Japan")や通信履歴(「米国連邦通信委員会のプライバシー政策」)について、個別の研究成果を公表している。さらに、情報が国境を超えて収集されることによって生じる、越境データ捜査の国際法や情報法の観点からの問題についても課題を提示した(「クラウド上のデータを対象とする犯罪捜査に関する法的課題」)。
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