平成28年から29年にかけておこなわれる本研究課題の最終年となる平成29年は、当初の計画にしたがい「上方漫才の成立――『啓蒙・消費・地域』の再編成と知識人の関与」【課題③】をまとめる作業をおこなった。併せて、課題③を遂行する上で基礎となる、資料の収集に務めた。具体的には次のとおりである。 第一に、本研究の基盤となる史資料を収集した。前年度より引きつづき、演芸や興行会社の社史、日本放送協会刊行物、放送用漫才台本や放送記録などである。近畿地方の公立、大学図書館での資料調査をおこなうことで、関東地方では流通しない史資料を得ることができた。 第二に、地方放送局(大阪放送局)の地域性、先進性について歴史的に検証するための実態調査に着手し、分析を進めた。他局との比較をおこないながら、戦前期の日々の番組記録の通史的閲覧を通して、地方局の特異性を明らかにする作業をおこなった。その成果の一部は、マス・コミュニケーション学会(2017年6月)におけるワークショップ(企画・司会)、および68回関西社会学会(2017年5月)で報告した。関西社会学会での報告には、関西社会学会より2017年度大会奨励賞が授与された。 第三に、研究成果の公開である。調査の過程を通じて広がったネットワークから、講演依頼を受け、一般向けの講演にパネリストとして招待され、戦前期知識人の漫才へのかかわりに関する講演をおこなった(2018年2月、「なにわ大阪の『笑い』に関する調査と研究」にて)。これらの報告を受け、企業新聞から2018年8月〆切の寄稿依頼を受けている。また、研究成果の公表と活動への理解を得るために、ホームページ作成にも着手した。
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