単純ヘルペスウイルスは宿主に潜伏感染するためウイルスを標的とする現行の治療薬では根治が不可能である.そのため宿主因子をターゲットとした新たな治療薬の開発が重要である.これまでに申請者らは単純ヘルペスウイルスICP0と相互作用する宿主因子RanBP10を同定している.またRanBP10はICP0と同様にウイルスゲノムのクロマチンリモデリングを介した遺伝子発現制御を担うことを明らかにした. ICP0とRanBP10の感染細胞における相互作用は共免疫沈降と蛍光抗体法により確認済みであるが,これらの相互作用が直接的なのかどうかは明らかになっていない.そこでpull-down assayを行うためにICP0とRanBP10のタンパク質を大腸菌で発現・精製しようと試みた.しかしどちらのタンパク質も発現・精製できなかったため,現在はバキュロウイルスを用いてこれらのタンパク質の発現・精製を試みている. RanBP10は宿主転写コアクチベーターであることが知られているが,その機能に関してはほとんど報告がない.そこで本研究ではRanBP10の機能をさらに解明するために,ICP0が相互作用しうる宿主因子とRanBP10の関連性を解析した.まずこれらの宿主因子のノックアウト細胞を作製し,野生型ウイルスとICP0欠損変異ウイルスの増殖を観察した.RanBP10ノックアウト細胞にICP0欠損変異ウイルスを感染させた際にウイルスの増殖が20倍以上低下した.すなわちICP0欠損時にRanBP10がウイルスの増殖に重要であることが明らかとなった.またRanBP10と同様の作用を有する新たな宿主因子を同定した.今回同定された宿主因子の役割をもとにRanBP10の機能がさらに解明できることが期待される.
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