本年度は、精神障害を持つ被収容者に対する社会復帰支援においてソーシャルワーカーが担う役割に関して、米国コネティカット州に加えニュージャージー州およびカリフォルニア州における取組みについても調査を行い、日米比較検討の精度向上に努めた。 ニュージャージー州においては、州立大学ラトガース医学部の州矯正局事務所にて、精神医療責任者およびソーシャルワーク部門責任者から聞き取りを行った。社会復帰支援計画全体のプロセスとソーシャルワーカーの役割について、日米比較の視点から詳細に情報収集を行うことができた。カリフォルニア州では、矯正施設出所者の医療保健サービスを提供するTransitions Clinic Networkを訪問し、医師およびソーシャルワーカーから聞き取りを行った。また、連携機関であるReentry Resource Centerを訪問し、対象者の社会復帰を包括的に支援する地域活動を知ることができた点は有益であった。本年度研究計画では多職種チームに関する比較調査にも焦点をあてたが、対象3州の各モデルでは、チームの中でソーシャルワーカーが独自の役割を担っていることが明らかになった。 日米比較検討のため、本年度も国内学会(日本司法精神医学会、日本司法福祉学会)等への参加を通して、日本における当該領域の研究動向調査、情報収集を継続した。また、法務省矯正管区における矯正専門職と面談し、ソーシャルワーカーの役割と概況について説明を受けるとともに、比較分析に際しての、触法精神障害者を取り巻く日米の歴史的・社会的背景の差異、そして社会復帰支援の実施環境の違いを明確化していく上での貴重な助言を受けた。 研究成果の一部は、関連学会(日本司法福祉学会9月)及び研究会(早稲田大学社会安全政策研究所11月)において発表したが、新たな研究成果についても引き続き学会、論文を通して発表・報告を行っていく。
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