研究課題/領域番号 |
16H07260
|
研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
須永 将史 立教大学, 社会学部, 助教 (90783457)
|
研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
|
キーワード | 会話分析 / マルチモダリティ / 家庭医 / 身体的相互行為 / 東日本大震災 / 医療社会学 |
研究実績の概要 |
本年度は2つのフィールドを軸に展開した。ひとつは、関東圏の診療所に協力いただき、家庭医療の診察場面の医療的相互行為場面である。家庭医たちは、診療所で、ときには患者の自宅で(訪問診察)、診療を行い、患者たちの生活の全体的な状況を視野に入れながら医療ケアを遂行している。もうひとつは、今年度調査を続けていくプロセスで調査としてのかかわりを持つことになった、岩手県内の被災地における病院での既往症患者の診察場面である。2011年の東日本大震災の津波以降、患者の心理的側面も含めた総合診療の必要性がたかまっている。どちらのフィールドも、医療的な相互行為場面であり、非常にミクロなレベルでおきるコミュニケーションが患者をケアするために行なわれており、本研究のテーマである家庭医療のミクロ社会学を解明するためにふさわしいものといえる。 前者の研究では、医師は診察場面で、患者を問診し、身体診察をし、診断をするというプロセスをおこなう。そのなかで、さまざまな仕方で患者の生活に関する情報を収集し、それにあわせて診断プログラムを構築していく。2016年度5月の日本保健医療社会学会では、それまでの研究蓄積を発表した。発表者は、須永将史(調査代表者)と黒嶋智美(日本学術振興会特別研究員:現玉川大学助教)であり、それぞれことなるトピックで発表した。また、本研究にとって重要な先行研究と考えられる、カリフォルニア大学のチャールズグッドウィン教授の翻訳も行なった。 それに対し後者の研究では、2016年度内に調査の詳細なスケジュールが決定したこともあり、現段階ではパイロット調査を進行中である。もちろん、これまでの関東圏での医療場面との関連や、これまでの調査のノウハウの蓄積もあるので滞りなく調査は進行している。本格的に調査を行なうのは、次年度(2017年度)という計画を立てた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの調査は順調に進行している。
|
今後の研究の推進方策 |
2017年度は、調査計画に則って進める。まず、2017年度も、2016年度と同様調査は続ける。得られたデータは,分析にすぐに組み込めるようにデータクリーニングをする。また2017年度は、性別規範と患者による主訴の語り方、コミュニケーションの身体性の2点について、それぞれ分析を行なう。第一に、家庭医療の診察場面において、どのような発話上のプラクティスが主訴提示にあらわれるかを観察することで,性別規範がどのように診断に影響しているのかを解明する。また第二に、具体的な身体的ふるまいの用法や身体の配置という水準での身体性に注目し、それが相互行為をスムーズに進行させたり逆に主訴理解を阻害したりする要因となったりするプロセスを明らかにする。
|